第5話 アルタ⑤ 勝利の代償

ー1915年8月23日ー


カミーユは死んだ。

カミーユはあの時何を考えていたのだろう。

この戦いが終わったら埋めてやろう。


そして俺たちは次々と塹壕を占領していき、ついに敵は撤退を開始した。

俺たちの勝ちだ、カミーユ。


そこにまた軍曹が現れた。


「無事か、二等兵!」


軍曹は俺の心配をしてくれたが、俺は軍曹にカミーユが死んだことを話した。

そしてなぜガスマスクを外してはいけなかったのか問いただした。


「あいつのことは残念だったな...ガスマスクのことだがな、走っていると後ろから霧が出てきただろ?あれは毒ガスだったんだ。それを証拠に敵の塹壕内はほとんど泡を吹いて死んでいただろ?上は最新兵器である毒ガスの使用を命じたんだ、それも極秘にな。」


なんとあの霧は毒ガスだった。

ではなぜ毒ガスのことを皆に伝えなかったのかも問いただした。


「あれは仕方なかったんだ。恐らくこの中隊の中にスパイがいるからな、このことを事前に知らせてしまうと、厄介なことになると考え、皆には伝えなかった。」


この中隊の中にスパイが?

ありえない、これでも一ヶ月一緒に不味い飯を食い合った仲だぞ。

俺はスパイの存在を信じなかった。


その後俺はヴィクトルを探した。

だがヴィクトルはなかなか見つからず、兵士にヴィクトルを見てないか聞いて回った。

どうやらヴィクトルは東の退避壕にいるそうだ。

そこは俺とヴィクトルはが初めて出会った場所だ。


東の退避壕に行くとそこにはヴィクトルがただ一人座っていた。

「探したぞ、ヴィクトル!」


ヴィクトルは俺を見て少し驚いたように見えたが、すぐに顔を下にさげた。


「実はなシャルル、俺、ライヒのスパイなんだ。」


俺は一瞬ヴィクトルの言ったことが理解できなかった。


「何言ってんだ、お前。」


するとヴィクトルは少し悲しそうに話し始めた。


「俺は、ライヒから塹壕内の情報を得るために送られたスパイなんだ。

最初は誰とも関わる気はなかったが、お前たちと出会ってすべてが変わった。

なぁシャルル、お前の手で終わらせてくれないか?」


ヴィクトルはそう悲しそうに言った。


「何言ってんだよお前、ヴィクトルがスパイのはずないだろ?」


俺はそう言うとヴィクトルは俺に拳銃を渡し、自分の頭に拳銃を突きつけた。


「俺は本気だシャルル、頼む。

お前たちは本当の仲間だったよ、最後にお前に会えてよかった。

じゃあなシャルル。」


俺は叫びながら引き金を引いた。

退避壕内ではドォンという銃声が音が響き渡った。


俺はヴィクトルの死体を隠し、静かなところでヴィクトルを埋めた。




                              アルタ編完

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