第3話 アルタ③ シェルショック
ー1915年7月15日ー
退避壕の外に出ると塹壕内には敵の砲撃による死傷者で溢れていた。
どうやら俺たちは運がよかったらしい。
他の退避壕では砲弾が直撃し、生き埋めになって死ぬ奴が多かったそうだ。
「グチョ」
俺は何かを踏んでしまった。
俺はそれが何かにすぐに気づいた。
塹壕では多くの死体が泥に埋まっていた。
「お前たち!こっちへ来て手伝え!」
ヨハン軍曹が俺たち5人を呼び、俺には小さな袋を渡した。
「お前は兵士の死体からドッグタグを回収しろ。いいな?」
「はい!」
「じゃあ、また後でな!お前ら!」
俺は一旦カミーユたちとは離れドッグタグを回収することになった。
正直やりたくはないが、仕方ない、俺はとにかく兵士の死体からドッグタグを回収していった。
死体を見るとなんだか、死が自分たちの目の前にあることを思わせられる。
回収が終わりヨハン軍曹にドッグタグの入った袋を渡した。
カミーユたちを探していると気分が悪そうな奴が座り込んでいた。
心配に思い声をかけてみた。
「気分が悪いのか?診療所ならあっちにあるぞ?」
そいつは顔を見上げ、俺の顔を見た。
驚くことにそいつは目の焦点があっておらず、体は震えていた。
そこにヨハン軍曹がやってきた。
「そいつはシェルショックだ、二等兵」
「シェルショック?」
「シェルショックは砲撃などからストレスを受け、パニック状態になっちまうんだ、一種のストレス障害だな。こいつはもう戦えないからもうじき除隊されるはずだ。」
「シェルショックは臆病者の証だ二等兵、お前もこんなふうにはなるなよ。」
ヨハン軍曹はそう言ってシェルショックの兵士を連れて行った。
あいつのことは忘れよう、そう思い気持ちを切り替えてカミーユたちを探した。
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