第2話 アルタ② 砲撃

ー1915年7月14日ー


前線に到着すると既に夜となっていた。

俺たちは希望を胸に初めて塹壕へと足を踏み入れた。

だが塹壕の中ではとんでもない光景が広がっていた。

泥だらけの地面、腐った匂い、全身血だらけの奴から内蔵が飛び出た奴らがいた。

俺は急に気分が悪くなり、嘔吐した。


「なぁ、シャルル、あいつらは輸送車に轢かれてあーなったんだよな?そうだよな?」


「ああ、そうに違いない、カミーユあっちにいこーぜ。」


俺たちは現実から目を背けるように怪我人から離れていった。


まだまだ心配なことが多いが今日は早く眠ることにした。

目をつぶっていると家族のことを思い出した。

母さんは俺のこと心配していないか、兄貴は無事なのか、瞬時に色々な不安が襲いかかってきた。


「ツーンツーン」

ついに耳鳴りまで始まった。

いや、待てよ、これは耳鳴りじゃない。


「ドォン!ドォン!」

どんどん音が大きくなってきた。

するとそこにカミーユが息を切らしながら寝床に走ってきた。


「大変だシャルル!敵の砲撃が始まったらしい!!」


「砲撃!?」

驚きのあまり俺は固まってしまった。


「なにしてんだよ!急いで退避壕へ逃げるぞ!」


「ああ、そうだった、急ごう!!」


俺たちは急いで退避壕へ飛び込んだ。

退避壕の中では一緒に歌いながら行進した新兵たちが何人かいた。

一人は泣き叫び、一人は嘔吐し、もう一人は恐怖のあまり笑いが止まらない奴がいた。

俺とカミーユは怖気づきながらも嘔吐している奴の背中をさすってやった。

砲撃は止まないが、奴の嘔吐は止まった。


「ありがとうなぁ、お前たちのおかげで楽になったよ、本当にありがとうぉ。」


「ならよかった、お前名前は?」


「俺はロアン・ニコだ、ロアンでいいよ。」


「ロアンか、いい名前だな、俺はカミーユ、そしてこいつはシャルルだ。」


ロアンと話していると泣き崩れていた奴と恐怖のあまり笑いが止まらない奴が喋りかけてきた。

それぞれフルーリーとヴィクトルという名前らしい。

5人で話していると、気づけば敵の砲撃は止んでおり、明け方になっていた。


とんでもない一日だったが、なんとか今日は生き残れた。


なにやら外が騒がしい、外へ出てみよう。



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