第78話 千恵の応援⁉ パート3 1/2
ただいま~!
と、玄関から元気のいい声が聞こえてきた。
千恵が帰ってきたらしい。
部屋でベッドを背もたれにして、今日一日を振り返っていた俺は、その数分後に突然勢いよく開け放たれた部屋のドアに、少しばかり体が跳ねた。
「お兄、いる?」
あの~、千恵ちゃん?
もはやノックもしてくれなくなったのかな?
一応、ここはお兄ちゃんのプライベートな空間であって、もしかしたらお兄ちゃんは千恵ちゃんが考えもつかないような、あんなことやこんなことを以下自主規制。
「あっ、ごめんねお兄」
俺の姿に気づくと、千恵は遅ればせながら既に開け放ったドアにコンコンとノックをする。
うん、それは全く意味が無いんだけどね。
そんな事を思っているなんて事はまったく顔に出さず、俺は千恵に聞いた。
「どうした、千恵?」
「あのさ、お兄」
俺の言葉を待っていたかのようにズンズンと部屋の中へと入って来ると、千恵は俺の投げ出した両足の間にチョコンと正座をする。
「今日の台湾グルメイベント、楽しかった?」
「ん? あぁ、そうだな。楽しかった、うん」
「良かったぁ……」
まるで自分の事のように、千恵は嬉しそうに笑う。
まぁ、千恵にとっては佳希との未来も掛かっているのだけど、でもきっと千恵はそんなことが無くても純粋に喜んでくれるような気がする。
そんな妹なんだ、千恵っていう子は。
「千恵も佳希と一緒で楽しかったか?」
「えっ? やだもぅ、お兄ったら~!」
佳希の名前を出しただけで、千恵はみるみる内に顔を赤くし、俺の足をペシペシと手で叩く。
「あのさ」
「うん?」
「お兄は、さ。明恵ちゃんにドキドキすること、ある?」
「……は?」
モジモジしながらの千恵の突然の質問に、俺はとっさに答える事ができなかった。
今日だって、俺は明恵の不意打ち笑顔にドキッとしたばかりだ。
だけどなんだか恥ずかしくて、妹にそんなことなんか、言える訳がない。
「じゃあさじゃあさ、明恵ちゃんをドキドキさせること、ある?」
答えない俺に『NO』と判断したのか、千恵は質問を変えてきた。
でも正直この質問、俺にされたって、なぁ……
「それは分かんないよ。俺、明恵じゃないし」
「そっかぁ、そうだよね。狙ってさせるものじゃないもんね、ドキドキって」
狙ってさせる事ができる奴も、世の中にはいるのかもしれないけどな?
なんて思いながらも、俺は千恵の言いたいことが分からずに首を傾げた。
きっと千恵はこんな事を話したい訳じゃないはずだ。
他になんか言いたい事があるんだろう。
しばらく黙って見守っていると、やがて千恵は赤い顔のまま上目遣いで俺を見て、ようやく話しだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます