第76話 【灯 vs 光希 ROUND4】 1/2

 ゴールデンウィークの台湾グルメイベント。

 光希は灯に誘われた。


「テルちゃんとか、明恵とかも、誘って行かない?」


 灯はこう言ったのだ。

 そしてせっかくだからと、光希は幸成にも声をかけ、輝良には妹の千恵も誘わせて、自分は弟の佳希を誘った。

 なのに。


「さぁてと。なに食べよっかな~?」


 光希は今、ご機嫌な灯と2人でイベント会場にいる。

 幸成には、先輩と会うから来られないと言われたが、その他はみんな、このイベントに来ているはずなのに。


「あれぇ? あたしと2人じゃ、緊張しちゃうかなぁ?」

「うるせっ、緊張なんかするかっ!」

「へぇ~? じゃ、今日は2人で楽しむぞー!」


 佳希はせっかくだから、千恵と2人でイベントを楽しみたいと言って来た。

 それは分かる。

 だから、別行動にした。

 けれども輝良と明恵については、『適当な理由つけて、テルちゃんと明恵を2人きりにしなさいよ』との灯からの指示で別行動となった。

 結果今、光希は灯と2人での別行動となっている。


 緊張しない、とは言ったものの、少し前、思わぬ流れで灯に告白をしてしまっているため、光希としては微妙に居心地が悪い。

 しかもその告白時、光希は灯本人から『頑張れっ♪』と応援をされているのだ。


「ったく、何をどう頑張れってんだよ……」

「ん? 何か言った?」

「別に」

「テルちゃんと明恵、少しはいい感じになるかな」

「だといいけどな」


 店を回りながらも、上の空で光希は灯の言葉に相槌を打つ。


「大尾くんと吉野さんも、少しはいい感じになるかな?」

「……あぁ、だといいけ……はぁ?」


 相槌を打ちかけて、光希は驚いて足を止めた。

 光希に合わせて、灯も足を止める。


「あたし、これでも頑張ってるんだけど。気づいてた?」

「え? なにが?」

「あーもぅっ! 鈍感2号かっ!」


 頬を膨らませ、灯は軽く光希を睨む。


「誰かさんが、ぶりっ子してないあたしが好きだって言うから、服もちょっと変えてみたし、今日はぶりっ子もしてないつもりなんだけど?」

「……確かに」


 光希は改めて灯を見てみた。

 確かに、いつも学校で見せる、あからさまに男受けを狙っているようなぶりっ子な感じではない。

 むしろ、光希が好感を抱いた自然体な感じだ。

 当初光希は、灯が苦手だった。

 噂を鵜呑みにした訳ではなかったけれども、実際に見るゆるフワ全開な灯の笑顔が、嘘臭く見えたからだ。


「確かに、じゃないわよ、もうっ!」


 なんであたしの周りはこんなに鈍感ばっかりなのかしらっ!


 と、不機嫌さを露わにして灯は歩き出す。


「ちょっと待てよ、吉野」

「あたしちょっとひとりで色々見て回りたいから、大尾くんは先に好きなの買って席取っといて」

「んだよ、もうっ!」


 振り返りもせずに行ってしまった灯を、光希は見送るしか無かった。

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