第69話 これはデートだ! 1/6
待ちに待ったゴールデンウィーク。
休みももちろん待ち遠しかったけど、台湾グルメにみんなで(というか、明恵と)出かける日を、俺は待ちわびていた。
その翌日には、いつものメンバーでの報告会が控えていたけど。
千恵も誘ったから一緒に行こうと思っていたのに、どうやら佳希が千恵を迎えに来たらしく、
「お兄、私先に行ってるね!」
と、千恵は俺を置いて先に出かけてしまった。
やるな、佳希。千恵を迎えに来るなんて。
つーか、同じ家から同じ場所に行くんだから、一緒に行けばいいと思うんだけど……まぁいっか。そこは少しの間だけでも、2人きりで居たかったんだろうな、佳希は。
少しだけ複雑な思いに駆られながらも、俺自身もちょっと早めに家を出て、明恵の家に向かった。
ドアベルを鳴らした直後。
すっかり出かける支度を整え終わっている明恵が出て来た。
「わっ! はやっ! なんで?」
「今ちょうど出ようとしてて」
「え? だってまだ早いぞ?」
「輝良迎えに行こうと」
なんだよそれ。
思わず頬が緩んでしまう。
「千恵ちゃんは先に行くって言ってたし、輝良寝坊してたら困るし」
って、そっちかいっ!
「誰が寝坊するかっ!」
「輝良」
「しねーしっ!」
「どうかな」
「楽しみにしてたんだからなっ!」
「私も」
そう言って明恵はニコッと笑った。
いつもの、ニヤッ、ではなく、ニコッと。
その笑顔に俺はドキッとした。
なんだよその不意打ち。ずるいだろ。
「じ、じゃあ行くか」
「うん」
やばい。明恵の顔がまともに見られない。
幸成から、明恵のことをちゃんと見ろって言われてるのに。
俺は明恵とあまり顔を合わせないようにして、駅に向かって歩き出した。
俺のすぐ隣を、明恵は歩く。
「デート」
「えっ⁉」
ポツリと言った明恵の言葉に、心臓が飛び跳ねる。
だけど明恵は、続けて言いながら、ニヤッと笑った。
「みたい、だね?」
「う……あ、あぁ。でもほら、みんな、来るし、な?」
「うん」
なんだろう、俺、明恵に揶揄われているんだろうか。
そっと、隣を歩く明恵の顔を盗み見てみる。
明恵はなんだか、嬉しそうな顔をしていた。
明恵も台湾グルメ、好きなのかな。
まぁ、女子はだいたい好きだもんな、台湾グルメ。
色々回って、たくさん美味しいもの食べられるといいな。
「輝良」
「ん?」
「台湾カステラ、食べよう」
「台湾カステラ?」
「プリン好きな輝良は絶対好きだと思う」
「そうか。じゃ、食べよう!」
なんかワクワクしてきた。
明恵と一緒の外出にも、台湾カステラにも。
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