第65話 とんだ勘違い、発覚! 2/3
「田内? あぁ、そういや同じペン持ってたな」
それが何か? とでも言うように、幸成は答える。
そしてその直後。
驚いた顔をして目を見開き、幸成は俺をマジマジと見た。
「……え?」
「え?」
その驚きの意味が分からなくて、俺もつい、マジマジと幸成を見る。
しばし見つめ合う、幸成と俺。
次第に俺たちの距離は近くなり……って、そんな訳あるかっ!
もとい、距離を保ったままの俺たち。
しばらくして、驚いた顔のまま、幸成が言った。
「お前もしかして、俺があのペン田内にプレゼントすると思ってたのか?」
「え? 違うのか?」
またも、しばし無言で見つめ合う、幸成と俺。
俺の視線の先で、幸成は唖然とした顔から徐々に呆れ顔へと表情を変え、しまいには、これ見よがしに大きく深いため息を吐いた。
「はぁ……なんでそうなる?」
「だってっ!」
明恵と付き合ってるんだろ!
心の中で叫んだけれども、そんな俺を幸成は冷ややかな目で見た。
「俺、言ったよな? 先輩の事」
「……うん」
「お前、俺が二股掛けるとでも思ってるのか?」
「え? いや、そうじゃなくて」
「じゃあ、なんだよ?」
冷ややかな中にも怒りが感じられ、俺はなんだかビビッてしまう。
「もう、先輩の事は諦めたのかと」
「言っただろう? 俺は諦める気はないって」
「じゃあ、明恵に告白とか」
「する訳ないだろ」
「じゃあ、なんで明恵はいつも幸成と」
「お前なぁ、鈍感な上に勘違いも甚だしいのか? どんだけポンコツだよ? いい加減にしろ!」
手に持っていた本をバシンと床に叩きつけ、幸成は俺を睨んだ。
あの~、幸成君?
モノに当たるのは、俺は良くないと思うんだけどな?
その本には、何の罪も無いんだし。
っていうかそれ、文芸部の本だから、大事に扱って欲しいなぁ……
なんて、とてもじゃないけど言えるような雰囲気ではない。
幸成は本気で怒っているようだった。こんな幸成は初めて見るかもしれない。
「田内と俺は塾が一緒なだけだ。田内がいい塾が無いかって探してたから、俺が今行ってる塾を紹介したんだ。塾でのクラスも一緒だからたまに一緒に行ったりすることもあるし、分からない所はお互いに聞いたりもする。田内が最近よく俺と一緒にいるのはそういう訳だ。どうだ、納得したか?」
え……マジ⁉
幸成の言葉はどこにも矛盾が無かったし、よく考えれば幸成が俺にも光希にも何も言わないまま明恵と付き合うなんて、そんな事をするはずがない。
俺一体、何考えてたんだろ……
これじゃ、幸成にも明恵にも、失礼でしかないじゃないか。俺のバカ。
幸成が怒るのも、当たり前だ。
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