第11話 バレンタイン反省会 3/3

「お茶のお代わりいかがですか~?あっ……ごめんなさい、お邪魔でした?」


 タイミングよく千恵が部屋に入って来て、幸成はようやく俺の手を離した。


「邪魔じゃないよ~、千恵ちゃん。気が利くねぇ、ありがとう」


 とたんに、デレッとした顔をして、光希が千恵を手招く。


「ねぇ、千恵ちゃんはさぁ、今年のバレンタインは好きな人にチョコ渡せた?」

「えっ!?いやあのっ、あはっ、あはは~、やだも~こうちゃん、セクハラー!」


 光希の腕を軽くパシパシと叩くと、千恵は顔を真っ赤にしてパタパタと部屋から走り出して行く。


 ……あの反応は、やっぱり千恵のやつ、好きな人がいるんじゃないか?


 なんて思ってしまう。


「お前も少し妹を見習ったらどうだ?」


 気づけば、幸成が呆れた目で俺を見ていた。


「だから、さっきから何言ってんだよ、幸成。俺がどうとかの前に、今年のバレンタインも全部義理だぞ?俺だけ本気になる方がおかしいじゃないか!」

「だーかーら、それ本気で言ってんのかって、幸成は聞いてんだよ、輝良」


 光希はまたも呆れた顔をして俺を見る。


「千恵ちゃんはまず除くとして、だ。クラスの女子もまぁ、この際除いておこう。でも、吉野と田内はどうなんだよ?」

「えっ?灯ちゃんと明恵?どうって、なにが?」


 とたんに聞こえる、ふたつの溜息。


 えー……俺、なんか変な事言った?なんで溜息吐かれなくちゃいけないのかなぁ?


「だって、灯ちゃんは料理部で作ったのくれただけだぞ?明恵はそりゃ、俺の大好きなプリン作ってくれたけど、あれはきっと試作」

「「プリンっ!?作ってくれた!?」」


 またも、幸成と光希の声がピタリと重なる。なんだこいつら、相性良すぎ!


「お前なぁ、バレンタインにチョコじゃなくてわざわざプリン作る女子なんて、そうそういないぞ?」

「輝良がプリン好きだって知ってるから、輝良のためだけにわざわざ作ってくれたんだろうなぁ、田内は」


 ふたりに言われて、確かに、と俺も思った。

 確かに俺だって、バレンタインにまさか大好きなプリンが貰えるなんて思ってもいなかった。

 だって去年までは明恵だって、普通にチョコくれてたし。


 はっ!

 もしかして、『今年はよろしく』って、そういうこと!?

『今年はバレンタインにプリン作るからよろしく』ってあの時宣言してた、ってこと⁉

 ……いやいや、まさか。


「でもほら、明恵は幼馴染だしさ。今更どうこうも無いだろ?灯ちゃんだって、保育園で一緒だったからって、いきなりどうこうも無いだろうし」

「「はぁ……」」


 また、溜息。×2人分。


「光希。俺は決めたぞ。絶対に応援する」

「俺もだよ、幸成。絶対に応援しような」


 幸成と光希ががっちりと手を取り合ってなにやら結束を固めている。


「えっ?何を応援するんだ?」


 当然俺もそこに加えてくれると思いきや。


「「うるさい、鈍感!少しは反省しろ!」」


 だって。

 俺、なんにも反省することなんてしてねぇぞっ⁉

 しかも、鈍感て!

 なんか、酷くね?幸成も光希も……

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