第4話 波乱のバレンタイン 4/8
「
「……相変わらずお前ら賑やかだな。ここまで声が聞こえてたぞ?」
呆れた顔で振り返ったのは、
幸成とは中学からの付き合いだ。今は幸成は1組。俺と光希が2組。
光希と俺は小学校から、幸成と俺達は中学から、よくつるんで遊んでいる。
とは言え、騒いでいるのはいつも光希と俺だけ。幸成は一緒にいるけどいつも一歩引いて冷静に見守っているような感じだ。
「俺のせいじゃない。光希がおかしなことばかり言うから」
「なんだよ、全部俺のせいにするのか?違うよなぁ?田内」
追い付いて来た光希が、同じく追い付いて来た明恵に同意を求める。
つーか、なに明恵に同意求めてんだよ、光希はっ!
「うん。輝良もうるさかった」
「ちょっ、おまっ、明恵っ」
俺の味方になってくれるとは思わなかったけど、光希に全面同意するとも思ってなかった俺は、思わず情けない声を上げる。
すると、そんな俺を見て明恵はニヤッと笑った。
もー、なんだよ明恵は!
俺を揶揄って面白いのかっ⁉
今年【は】よろしく、ってのは、やっぱり今年【は】今までよりも更に俺を揶揄うから覚悟しとけよ?って事だったのか⁉
「おはよう、田内」
「おはよう、宝達君」
明恵は澄まし顔に戻って幸成に挨拶などしている。
あれ?ちょと待て。
そういや俺、光希にしか「おはよう」言われてない……
急に寂しくなって立ち止まると、明恵が気づいて立ち止まり、振り返った。
「どうしたの?」
「いや、べつに……」
俯いた俺の顔を、明恵が下からズイッと覗き込む。
「どう、したの?」
こんなくだらない事で拗ねてるなんて言いたかなかったのに、明恵のこのガン見に俺は弱い。
なんせ、こいつはこうなったら、納得の行く答えを聞き出すまで絶対に諦めないから。
「俺、光希にしか『おはよう』言われてないな、って」
俺の答えに一瞬目を丸くした明恵だったが、その目を優し気に細めると、そのままの顔で口を開いた。
「おはよう、輝良」
「……うん、おはよ」
そして、すぐに何事も無かったかのようにスンとした顔に戻り、俺を置いて校舎の中へと入っていく。
「……優しいんだかなんだか、よく分からんヤツだな」
それでもちょっとだけ胸がスッキリした感じがして、明恵を追いかけようとした俺だったが、後ろから掛けられた声に足を止めざるを得なかった。
「待って、辻君!」
振り返ると、そこにいたのは同じクラスの女子3人組だった。
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