第7話 ファーストキス

「ど、どうしよう」


 涙目になって慌てる小守さん。

 どうしようって……もうその辺でするしかない気が!


「草むらで……」

「そ、それだけは嫌」

「でも、我慢できないんでしょ?」

「う、うん……」


 もう時間の問題か。

 となると恥じを捨てるしかない。


「俺が見ているからさ」

「で、でもぉ……」

「仕方ないさ」


「……うん」


 小守さんは諦めたのか、草むらを選択した。

 俺だってすげぇ複雑だよ。

 でも、仕方ない。


 誰もいない草むらへ向かい、小守さんを奥へ行かせた。


 その間俺は監視役。


 早く済ませてくれるといいが……。


「……」

「霧島くん」

「なんだい」


 草むらの奥から小守さんの声がした。


「音……聞かないで」

「耳を塞いでいろと?」

「うん、お願い」

「仕方ないな。ノイズキャンセリングイヤホンをするよ」

「助かる!」



 俺は、イヤホンで耳の穴を塞ぐ。ノイズキャンセリングなら音は聞こえない。


 しばらく待つが、小守さんはなかなか戻ってこない。


 な、長いな。

 そんなに我慢していのだろうか?


 やがて小守さんは顔を真っ赤にして戻ってきた。



「済んだ?」

「…………こんなの人生ではじめて」

「俺だってそうだよ。同級生の女子が外でするところなんて……」

「もうお嫁にいけない。霧島くん、責任取ってよ!」

「え!?」



 それって結婚してもいいってこと?

 そりゃ嬉しいけどね。

 小守さんなら可愛いし、俺の心の支えだし。



「だめ!?」

「だめじゃないけど」

「じゃあ、決定ね!」


 強制的に決められ、俺は小守さんと付き合うことに(?)なったらしい。今での良かったのかなぁ。


 いや、いいか。

 これもなにかの縁だ。


 そうして俺は小守さんを家まで送り届けた。


「おつかれ」

「ありがとう、助かったよ。霧島くん」

「――あ。それなんだけどさ」

「ん?」

「大地でいいよ」

「……じゃ、じゃあ……わたしのことも、まりえって呼んで」


「お、おう。ま……まりえ」


「ありがと」



 お互いに恥ずかしくなって早々に解散した。


 俺は家へ戻った。



 それから、俺とまりえは約束通り付き合うようになった。

 相変わらず、まりえは我慢ばかりして漏れそうになっている。そんな光景が愛おしくさえ思えている。



「またか、まりえ」

「えっへへ。ごめんね」



 今日も俺は、まりえの為にトイレへ付き添う。

 周りの目はもう気にならなくなった。

 付き合っているから関係ねぇ。

 てか、公認カップルみたいになっていたし、もう誰も文句も言えなかった。


 もう俺は大丈夫だ。

 十分な幸せを手に入れた。


 これからも、まりえと共に学生生活を送る。



「まりえ」

「大地くん……」



 俺は、まりえのファーストキスを奪った。

 まりえも嬉しそうに抱きついてきた。


 なんて幸せ――。




◆ありがとうございました


 ここまでありがとうございました!

 短編として終わりにさせていただきます。

 また次回作もよろしくお願いいたします。


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隣の席の漏れそうな小守さん 桜井正宗 @hana6hana

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