第6話 放課後の漏れそう

 一日が過ぎた。

 小守さんとの距離は縮まり、二人でいる時間が多くなった。


 相変わらず彼女は、我慢して漏れそうになっている。


 放課後、一緒に帰ることに。


 廊下を歩く最中、俺は話しかけた。


「小守さん、なんでいつも我慢してるの?」

「え……。そ、それは……恥ずかしくて言えない」


 それもそうか。

 乙女の秘密を暴くようなものだ。

 しかし、意外すぎるというか、特殊すぎるというか……。

 でも、俺だけが知る“秘密”なわけだ。

 それはそれで嬉しい。


「わ、分かったよ。聞かない」

「うん」


 校門を出ると、空はすっかり茜色。

 各々自分の自宅を目指して歩いていく。


 俺たちも自分の家へ向かう。


「小守さんはどこ住み?」

「ここから三十分のところ」

「遠っ! 思ったより歩くね」

「そうなの。だから我慢すると大変で」


 顔を赤くして小守さんは、なんだか妙に嬉しそうに言った。まてまて、クセになっているじゃないか。


 だから俺は思わず真顔で言ってしまったんだ。



「小守さん……ヘンタイだね」

「…………うっ」


 自覚があるのか言葉に詰まる。

 おいおい、それじゃ生粋のヘンタイになってしまうぞ。


「困ったら頼ってくれ」

「うん。でも今もちょっとヤバいかも」

「マジかよ……」


 この辺りはコンビニが少ないから、いざとなったら危険だぞ。その辺でするしかなくなる。

 まあいい、この俺が守る。


 少し歩き、俺の家と小守さんの家は割と近所だと判明した。


 なんだ、隣町の境だったのか。



 歩いてニ十分後。



 突然、異変は起きた。



「……ヤバい」

「え!? 小守さん!?」


「もう我慢できない……漏れそう」


「ちょ! 小守さん、家まであとどれくらい!?」


「まだ遠いよぅ。間に合わない」



 大ピンチじゃねぇか!!

 くそ、この辺りにコンビニとかトイレを借りれそうな施設もないぞ。


 ああ、そうだ!


「公園があるじゃないか!」

「そ、それだね……!」


 歩いて三分の場所に公園がある。

 そこまでなら間に合うだろ。


 俺は小守さんを連れて公園へ向かった。


 日が傾き、人はほとんどいない。


 トイレは……あった。


「あそこだ!」

「ありがとう、霧島くん……」

「急いで、漏れちゃうよ」


 なんだこの会話!

 けど、緊急事態だ。仕方ない。


 お腹を押さえ、内股で歩く小守さん。我慢しすぎ! ていうか、ここまで来ると、もはや可愛い……。いや、どうにか間に合ってくれ。



 だが。



 なぜか足を止める小守さん。



「? どうした」

「……入れない」


「え」


「トイレが故障中で入れなああああああああああい!!」


「なにいいいいいいいいいいいいいいい!!」



 よく見ると女子トイレには張り紙がされていた。



【故障中につき使用禁止】



 そんな馬鹿なああああッ!!!

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