第4話 小守さんまた我慢してる

 小守さんを連れて学校内へ。

 そのまま俺が女子トイレまで連れていくハメに。……って、なんで俺が! 他の女子に誤解されるって……。


 そう思ったけれど、幸いなことに他に女子の姿はなかった。


 こんな早朝だからセーフだったな。

 

 しばらくして小守さんは女子トイレから帰還した。すっきりした顔で俺を見つめ、笑顔に溢れた。


「ありがとね、霧島くん!」

「なんか複雑だけど、助かったのならいいや」

「昨日に続いてごめんね。本当は凄く恥ずかしいんだけど……。頼れる人がいなかったから」


 耳まで真っ赤にする小守さん。

 多分本当は死にたくなるほど恥ずかしいはずだ。

 でも、頼れる人がいないんじゃ仕方ない。


 妙な空気の中、教室へ向かった。


 正直、かなり気まずいが――気にしないでおく。その方が逆に傷口が広がらない。


 隅の席に座り、俺は一呼吸ついた。



「…………ふぅ」



 隣の席に座る小守さん。機嫌が良さそうだ。



「そういえば」

「なんだい、小守さん」

「霧島くん、今朝なんか体調悪そうだったけど……大丈夫?」

「え? そうかな」

「うん。顔が青かったよ」


 どちらかといえば小守さんの方だとは思うけど。確かに、会う前は岩井先生のことでショックを受けていたからなぁ。

 でも、小守さんと直ぐに会えたおかげで、俺の心は保たれた。


 彼女の存在がなかったら俺は、家で引き籠って泣いていたと思う。


「いや、大丈夫だ」

「本当に?」

「うん、本当に」

「分かった。でも、悩みがあるならいつでも話してね。相談に乗るから」

「ありがとう」


 優しいな、小守さん。

 心の中で感謝して、俺は授業を淡々と受けていく。


 不思議とクラスメイトも俺と小守さんの事に関して興味は薄く、あれやこれや噂を立てられることもなかった。


 多分、俺が分厚い壁を作っているせいだろうな。

 基本的にクラスのヤツ等とは絡まないし。



 そんなこんなで昼休みを向かえた。



 ひとりで飯を食いに行こうとすると、小守さんが俺を呼び止めた。



「まって、霧島くん」

「……ん?」

「い、一緒にお昼食べよ」

「え……でも」



 てか、小守さん……内股でモジモジしてるぅー!?


 またなのか……。

 またなのかよ。


「…………ね?」

「ね、じゃないよ。小守さん、それクセなの?」

「え? な、なんのことかな~…」



 やっぱり我慢しているじゃん。

 もー、変わっているというかヘンタイというか……なんでこんな可愛いのに、こんな謎性癖があるんだよ! 趣味なのか?


 けど、美少女に欠点のひとつはふたつくらいあるよな。

 昔風の料理クソ下手ヒロインよりは、尖っていて面白いと俺は思った。



「仕方ないな。女子トイレへ?」

「うん。付き合って……」


 なんでそんな切なそうに言うのー!?

 クラスメイトから白い目線(特に女子)を送られている気がするが、ここは早く教室を出た方がいいな。


 俺は小守さんを連れて女子トイレへ……。

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