第2話 付き合っていた先生が寝取られた

 ショックだ。

 岩井先生は、俺を好きだと言ってくれたのに……。

 どうしてあんな男と。


 悔し涙が止まらない中、体育館の中へ。

 幸いにも利用者はいなかった。誰もいないので使わせてもらうことに。


「よかった、ここで話せるね」


 俺の手を引っ張ってくれる小守さん。

 なにこれ、嬉しすぎる。


 ステージに腰掛け、俺は遠くを見つめた。


「……はぁ」

「落ち込む……よね」

「さすがにね。俺、岩井先生のこと、好きだったんだけどなぁ……」

「でも珍しいね。保健室の先生と恋愛だなんて」


 キッカケは、俺の虚弱体質にある。

 よく貧血で倒れていたので保健室を使っていたのだ。

 岩井先生は、俺を優しく扱ってくれた。

 体のことだけでなく、悩み相談も受けてくれた。話している内に、俺は先生のことが好きになっていた。

 先生も俺が自然と好きになっていたようで、意識しはじめていた。そうして、密かに俺と岩井先生は付き合うことに。


 半年間、ずっと幸せだったのに。

 あれは仮初の幸せだったのか――。


 ちくしょう……。


「……っ」

「な、泣かないで、霧島くん」


 励ましてくれる小守さん。俺の手をぎ

ゅっと握ってくれて、なんだか凄く安心できた。


「すまない」

「いいのいいの。ほら、助けてもらったお礼」

「いやぁ、俺の暴走だよ」

「そんなことないよー。あの時は本当に……ヤバかったから」


 かなり我慢していたってことか。

 こんなに可愛いのに、なぜそんな謎性癖があるんだか。でもいいや、小守さんと一緒にいられると楽しいし、気も楽なっていた。


「なら良かった」

「うん」

「……と、そろそろ戻らないと。小守さんはどうする?」

「うーん。わたしは後から教室へ向かうよ。霧島くんは戻った方がいいと思う」

「そうする」


 小守さんは、しばらく体育館で寝るらしい。ここなら次の授業までは大丈夫だろう。

 手を振って別れ、俺は教室へ。



 ◆



 クラスへ戻ると、みんなが一斉に振り向いた。

 ……なんか変な目で見られているが、俺は気にしないことにした。こういう時、動揺を見せたら負けだ。

 それに俺は元から浮いた存在。

 今更アレコレ言われても痛くも痒くもないのだ。


 気にせず授業を受け続ける。


 そうして――放課後。


 隣の席の小守さんも、いつしか席へ戻っていた。


「今日はありがとう、霧島くん」

「いや、こちらこそ」


 小守さんは帰宅した。

 俺も帰ろうっと。


 普段なら廊下に出て……保健室へ向かうところだ。


 どうする。寄るか?

 いや、寄るしかないだろう。先生を問いつめないと。

 俺とはお遊びだったのか、心を弄んだのか……真実を知りたい。


 保健室まで向かい、扉を開けようとすると――。


 パンパンと音が聞こえた。



 ……………え。


 は…………?



 ウソだろ。

 まさか、また……。



 震える手で扉を開けようとするが、声で分かった。

 岩井先生は喘ぎ声を響き渡らせていた。どうやら、この扉の前に押し付けられ、後ろから攻められているようだった。



 ……脳が……おかしくなりそうだ。



 くそ、くそ、くそぉぉぉぉ……!

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