怪しい古城

@peacetohanage

第1話

人知れず、怪しげな古城が聳えていました。

そこには骸骨の貴族達が住んでいて、ある時貴族の長男の誕生日に肖像画を注文します。

絵描きは遠い町から訪ねて来て、数日を掛けて立派な肖像画を完成させました。

しかし人間の肖像画を描くのが得意だった為、骸骨に肉付けを施し、見目麗しい一人の青年がそこには描かれていました。

長男は肖像画の自分を大層気に入り、玄関ホールの正面に飾ります。

絵描きは仕事が終わってしまうと、それに見合った報酬を貰って古城を後にしました…。

絵描きの姿は古城に来る以前とは違っていましたが、当の本人はそれに気付きませんでした。

またある時、道に迷ったと言う少女が古城を訪ねて来ます。

玄関ホールの鍵は開け放たれていて、少女は中へと入りました。

すると正面に飾られている青年の肖像画があまりにも美しい為、青年を一目見たいと言う気持ちが強まります。

勇気を振り絞り、薄暗い古城の回廊に踏み入ります。

すると骸骨の貴族が行く手に一人、立ち塞がるのですがそれは紛れもなく長男だったのです。

娘は震える声でおどろおどろ尋ねます。

「玄関ホールの肖像画の青年に、一目私を会わせて頂けませんか?」

「あれは僕です。僕の肖像画なのです」

すると途端娘は打ちひしがれました。

彼の美しい青年は目の前に居て、もう死人になってしまったのか?と。

そうして相対する骸骨の貴族がだんだん怖くなって、玄関ホールへ引き返そうとした矢先…回廊の鏡に映る自分を見て悲鳴を漏らしました。

既に少女の姿は、瞬く間に骸骨へと変身していたからなのです。


おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怪しい古城 @peacetohanage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る