Part,8 Determined to Fight
魔剣とは、魔剣職人が魔力を込めて作る「全ての生命に対して効果的な武器」である。メリットも存在するが、その分のデメリットも存在する。そのメリットとデメリットの具合で、「上位魔剣」、「中位魔剣」、「下位魔剣」と呼称が変動する。現存する上位魔剣、中位魔剣、下位魔剣の割合は、1:3:6である。
「こんな感じかな」
「なるほどな。つまりはこの魔剣を作った人が、この魔剣に斬奸っていう名前をつけたのか」
「そういうことだね」
光斬は魔剣に関しての知識を身につけると、2人は横にある鞘を取って腰に差し、鞘に魔剣を収めると部屋を出て訓練場γに向かった。訓練場γの前には魔剣を腰に差している者や、刀の形をしていない特殊な魔剣を持ったりしている者もいる。だが、全員に共通していることは、黒を基調とした特殊な全身スーツに、黄緑色のラインがところどころに施された対フェミーバー用の強化装備を装着していることである。それは2人も同じであり、訓練場γに着く前に強化装備をつけることを職員に強制されたからだ。
受験者全員が訓練場γの前に着いたことを神の代行者側が確認すると、深緑髪短髪の黒眼を持つ180cm程の長身の男が訓練場γの外壁の上に現れた。
「君達はここに入って、実際にいるフェミーバーを殺してもらう。ここにいるフェミーバーはそこまで強くはないが、君達にとっては十分な脅威となるだろう」
その男は、急に訓練場γ内を見ると腰に差している魔剣を抜いて訓練場γ内に向ける。すると、魔剣の剣先に緑色の魔法陣が現れた。
「
『
男はそう言うと、尖った黒い樹木の枝が魔法陣から大量に噴出した。遠目から見ている受験者達は、何が起こっているのか全くわからなかったが、数秒が経った頃、3mを超える白に身を包む人型をした巨大な怪物が、外壁を大きく超えて姿を現した。だが、上に放り投げられたような体制であり、下から魔法陣から繋がっている小さな黒い枝が高速で怪物へ向かって放たれる。怪物は為す術なく串刺しにされ、体内から爆発して血の雨を降らせる。
「このように、巨大なゴミ虫が溢れている。君達はこの中にいるゴミ虫を殲滅し、生き残ること。命の保証はしない」
すると、受験者達の目の前にある大きな重そうな赤い扉が開かれる。先頭にいた受験者達は扉が開くと共に訓練場γに入っていき、それに続くように後続の受験者達も訓練場γに入る。最後尾にいた彼らも、また訓練場γに入るのであった。
光斬とネセントは訓練場γ内を移動していたが、強化装備のおかけで素の状態でもかなり速く走ることができていた。時速100kmにまで達していた受験者達の足だが、それでも捕食されている者はいた。
(これが……、フェミーバー……)
光斬は鞘から斬奸を抜き、目の前にいる全身を緑色の四足歩行で走る犬のような形をしているが、肩の部分から腕が2本ずつ生えている異形のフェミーバーの胴体の下に走って入る。光斬はそのまま跳躍し、斬奸を上へ突き上げてフェミーバーの胴体を貫く。50m程飛んだ光斬は、下でフェミーバーが爆散したことを確認して、着地の体制に入った瞬間であった。空を飛ぶ巨大な桃色の球体に、こちらを見る大きく不気味な黄緑色の瞳を持つ、長いまつ毛が付いた目があった。球体ではない部分は髪のようなものがまっすぐ伸びており、それが不気味さに拍車をかけていた。恐らくそれはフェミーバーであり、桃色の球体の中から青白いエネルギーが溜まっているように見えた。光斬がそれを顔ごと向けて見ると、瞳の瞳孔が開いて青白いエネルギーがもろに見える状態だった。
光斬は球体のフェミーバーを見て、青白いエネルギーは何をするためのものなのだろうと考えた。だが、それは最初から頭の中にあった。エネルギーを使って光線を放つのだろうと。
ガシッと言う音がすると、光斬はいつの間にか地上にいた。あまりにも速い移動だったため、光斬は反射的に目を閉じていた。光斬は目を開けると、そこにあったのは安堵に包まれた顔をしたネセントの姿。
「危なかったかぁ……」
一方、150体のフェミーバーを既に殺していたネセントは、光斬が四足歩行のフェミーバーを殺した瞬間を見ていた。高さ200m地点で外壁のすぐそばにいたネセントは、自分とは反対側にいる球体のフェミーバーを既に視認していた。
(マズい……!!)
「身体強化・強」
ネセントは、普通は体全体にかける身体強化・強を両足だけにかけ、両足を限界まで強化した。その状態で更に彼女は魔法を使用した。
「
『
なんとか光斬を掴み、すぐさまお姫様抱っこに体制を変えたネセントは足で衝撃を吸収しながら着地した。彼が目を開けたのを確認すると、ネセントは安心した声で言う。
「危なかったぁ……」
光斬とネセントは球体のフェミーバーの方を向く。球体のフェミーバーからは超高威力の光線が放たれ、当たった外壁の部分には穴が空いていた。
「とりあえず空は私が抑えるから、陸にいるフェミーバーは光斬に任せた」
「お、おう……」
すると、ネセントは薄黄色の魔法陣と紫色の魔法陣を出現させる。
「
「
『
『
ネセントはそう言うと、2つの魔法陣からは5本ずつ10本の光線が放たれ、彼を襲ったフェミーバーに風穴を空ける。フェミーバーは内部から爆発し、血の雨を降らせる。そのままネセントはその場所を離れて周囲で戦っている受験者達の手助けに向かう。その一方で、光斬は足元にあった藍川 伸造の頭部を視界に入れる。恐怖に染まった顔で首より下が引きちぎられており、光斬は訓練場γ内にあるビルの屋上を見上げると、伸造の胴体を鷲掴みにしているフェミーバーがいた。全身が赤で包まれており、筋骨隆々とした肉体を持つ3mを超える巨体である。
赤いフェミーバーは光斬を見つけると、体にあるとてつもない筋肉を使ってビルから飛び降りる。着地した際に、光斬はとてつもない地響きを浴びるが、それでも倒れずに赤いフェミーバーを目の前にする。
(……よし)
赤いフェミーバーはとてつもない威圧を放ち、息を吐いて臨戦態勢に入る。深呼吸をして覚悟を決め、戦闘態勢に入った光斬は、赤いフェミーバーに向かって走り出した。
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