第16話
フリーキックが放たれた。蹴ったのは若きストライカーの新見だった。
ボールは壁の右を飛んでいったが、ボールにかけられたスピンにより徐々にカーブがかかりゴールマウスの方へと向かっていく。
桜井は新見、若林さんのどちらが蹴っても対応できるように重心を左右偏ることなくイーブンにしていた。そのため、最初の反応は若干遅れるが、なんとかボールに触れそうなタイミングで横っ飛びのごとくジャンプした。
ゴールへ向かってくるボールはコースを狙ったコントロールシュートだったためボールスピードはそれほどない。桜井のセービングが届きそうだ。
桜井は確実に防ぐためにパンチングで弾き出すために手を伸ばしてボールを弾いた。
パンチングは大きく相手陣側に弾き返すのが定石だが、桜井のパンチングは浅かった。ペナルティエリア内でバウンドしたボールを若林さんがおさめた。
若林さんは即座にシュートの体制に入る。桜井はまだ倒れたままのためゴールマウスはがら空きだ。
その若林さんに武田が身体を寄せていった。その瞬間、若林さんはシュートを止めて切り返す。シュートフェイントだ!
シュートフェイントに武田はついていけずに寄せた身体の脚が若林さんの脚にかかり倒れる。
「ビー!!」先程も聞いた鋭いホイッスルが再び吹かれ、主審が再び胸ポケットからイエローカードを提示して、続けてレッドカードを提示した。
2枚目のイエローカードだ。武田は先程のファールと合わせて退場となった。
武田はうなだれながらも主審に対して抗議をしている。主審はそんな武田の抗議を聞くこともなく、即座にペナルティースポットを指し示した。
筑前にペナルティーキックが与えられた。
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