第14話
試合が再開されると、ますます筑前の攻勢が激しくなった。
普段試合に出ておらず、怪我をしている桜井に対して好機とばかりに、隙があればシュートを放ってくる。
始めはゴールの枠を捉えていなかったシュートが、打ち続ける中で精度が上がり、枠内に入ってくる回数が増えてきた。
桜井は失点のリスクをできるだけ減らすために可能な限りキャッチを試みていたが、本当にやばいタイミングのシュートはパンチングでなんとか跳ね返していった。
前半35分を超えると、味方ディフェンダーの集中力も怪しくなり、簡単に筑前のストライカーである若林と新見に振り切られる場面が増えてくる。
アルケミストのベンチからは監督の古賀が「集中!!」と大声を出してディフェンダーの伊達と武田に声掛けをしているが、その声は筑前サポーターの大声援により虚しく掻き消されていた。
後半40分を過ぎると、桜井のパンチングしたボールがゴールラインを割り、筑前のこの試合初めてのコーナーキックとなった。
「集中しろ!守備を固めるぞ!」
桜井は伊達、武田を中心とした守備陣を怒鳴りつけながら奮起を促す。
筑前が放ったコーナーキックはアルケミストがヘディングで弾き返したが、そのこぼれ球は再び筑前に回収された。
筑前は二人、三人とパスを回した後、アルケミストのセンターバックの伊達の脇を裏のスペースを狙って走り込んだ新見にスルーパスが放たれた。
そのボールを伊達を置き去りにした新見が走りながら受けてピッチ中央にドリブルで切り込む。新見の狙いは真ん中にドリブルで切り込んでゴールへの角度をつけたところでシュートを打つ公算だ。
桜井は新見のドリブルを目で追いながら、いつシュートを放たれても反応できるようにシュートに対する構えを取った。
その瞬間、新見にアルケミストの選手のタックルが入り激しく倒れた。
「ピー!!」主審の激しい笛がピッチに鳴り響き、即座に胸元からイエローカードが提示される。
イエローカードを受けたのは、アルケミストのもう一人のセンターバックの武田だ。新見に振り切られた伊達を見て、捨て身で潰しに来ていた。
ゴール正面でのフリーキック。前半45分を超えたところで、筑前には絶好のチャンスが巡ってきた。
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