第13話

「ピー!!!」

 鋭いホイッスルの音がピッチ上に響き渡った。桜井がうずくまったことによる主審の笛だ。


 その音とともに、即座にアルケミストの医療スタッフが桜井の側に駆けつける。 


 アルケミストはゴールキーパーの川田さんが体調不良で不在。第二ゴールキーパーの桜井が故障した場合は、もしもの場合に備えて連れてきているユースのゴールキーパーしか残っていない。まだ経験の浅く、身体も出来上がっていない彼を出場させるのはかなり厳しい状況だ。


 桜井はチームドクターの話にうなずきながら、ようやく身体を起こした。出血している箇所があるらしく、チームドクターが頭にテーピングをぐるんぐるんと回しているが、テンションが上がっている桜井には痛みは感じない。むしろ、身体を痛めたことで先程よりは、少し冷静に慣れた感じがする。


 ゴール裏を見ると東京から熱心に駆けつけてくれている馴染のサポーターが大きな声で自分の名前を叫んで鼓舞をしてくれている。


 真正面を見ると、相手のゴール裏は筑前サポーターで埋め尽くされ、相手チームを圧倒するかのような声援に顔の皮膚がピリピリと感じた。


「俺、公式戦に出てるのか」


 桜井は独り言をつぶやくと、チームドクターにオーケーのサインを出して守るべきゴールの方へと向かっていった。

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