第12話
突然のことで頭の整理がつかない。胸の鼓動は通常よりも早く打ち付け身体を震わせる。緊張からなのか、喉が渇き水分を欲している。
桜井純一は本日の第一ゴールキーパーである川田さんの体調不良により、予想もしない展開で公式戦のピッチに初めて立っている。試合開始して5分が経過したが、緊張により脚が地についておらず、冷静になれていない。
味方のサイドハーフがボールを失うと、筑前の動きが急にテンポアップしてこちらへ向かってくる。
サイドに散らされたボールを受けた筑前のウイングの選手からFWの若林さんにボールが渡る。
若林さんに伊達がついていたが、細かいステップのあとのシュートフェイントによりかわされてしまい、ゴールキーパー桜井との一対一になってしまった。
桜井はとっさに3日前にまとめた若林さんの特徴の情報を思い出そうとするが、こんな状況では全く思い出せない。
できるだけ先に身体を動かさないようにこらえていると、若林さんの方が先にシュート体勢に入ったので無我夢中でそこに食らいついた。
肉体と肉体がぶつかり合う衝撃と音の後に、主審の笛がピッチ内に響き渡る。桜井は身体全体を亀のようにした状態でボールを抱えていた。どうやら、若林さんと交錯するなかで足元からボールを奪い取れたようだ。なんとかボールを奪えたが、身体全体に痛みが走りピッチに倒れ込んだ。
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