第6話

 2月後半の日曜日、朝晩はまだ冷え込むが、日中の気温は少しずつ春の気配を漂わせてく時期となった。日本サッカーのプロリーグであるNリーグの3部に所属している西東京アルケミストFCは新シーズの開幕戦を迎えようとしていた。


 初戦は今シーズンからN3に昇格した滋賀をホームの西東京運動公園スポーツセンターで迎え撃つ。会場は試合開始の数時間前からコアなサポーターが集まり始めた。


 昨日の練習時点で本日のスタメンは今シーズンから就任した監督の古賀から伝えられていた。


 フォーメーションは4-2-3-1。守備陣を紹介していくと、ゴールキーパーは若手期待の野沢、センターバックは同じ寮に住んでいる伊達と武田。サイドバックの右はベテランの大内さん、左は中堅の鍋島さんだ。


 第二ゴールキーパーは、当然ながら元代表の川田さん。そして、俺はベンチ入りできない第三ゴールキーパーである。


 ベンチに入れないからと言って、暇なわけではない。試合前日までにまとめた相手の情報をミーティングで伝え、相手選手の特徴や癖をゴールキーパー陣に共有した。持ってる情報はすべて伝えたが、シーズン開幕戦であり、なおかつN3初参入の相手のためデータは足りてない。


 試合当日はベンチ入りしないスタッフとともにメインスタンドから試合状況を観察した。上から見ていて気がついたことがあれば、スタッフから無線で監督、コーチへ無線で報告される。


 なれない環境であたふたしながら開幕戦は終し、試合は2-0で西東京が勝利した。


 試合の翌日はコンディション調整のため、ベンチ外、交代出場の選手で練習試合が行われた。この試合のゴールキーパーは昨日控えだった川田さん。俺は第二ゴールキーパーとしてベンチ入りしたが出場機会は無かった。人数合わせの代替ゴールキーパーではあるがプレイできないのは辛い。

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