第5話

 西東京アルケミストFCのクラブ規模は小さい。日本を代表するN1クラブと比べると象と蟻ほどに差がある。


 そんなクラブであるため、第三ゴールキーパーの役割は多い。まあ、ぶっちゃけて言うと、いろいろなことをやらされる。


 例えば、対戦相手の分析。昨シーズンのN3クラブの選手データからプレイの傾向を調べる。


 他のクラブだと、分析の専門家がいるのだが、資金力のないこのクラブにはいないため、選手やスタッフで分担しながら行っている。


 俺が担当しているのは、選手が放つシュート方向や、コーナーキックの種類などゴールキーパーの守備に関わる部分を担当している。分析や報告は短い期間だったが会社で働いた経験が活きた。表計算ソフトやプレゼンテーションソフトが大いに役立った。


 これまでデータをそれほど意識はしていなかったが、数値を見ていくと、この選手はニアにシュートを打つとか、シュートを打つ前にフェイントをいれるなどの傾向が如実に表れる。数字で相手選手の特徴を丸裸にしている感じだ。


 データ分析以外にも、シーズンに入ると他チームの試合のスカウティングも行うらしい。なんだが、選手というよりもスタッフとしての位置づけが強いように感じる。ほとんど、試合に出ることがない出ることがない役割なので仕方ないのかもしれないけど。


 トレーニングキャンプを終え、プレシーズンマッチを数試合行ってN3リーグ開幕戦を迎えた。

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