第4話
シーズン前のキャンプでは他チームとの練習試合が組まれている。対戦相手は同じカテゴリーのN3のチームや、下のカテゴリー、大学のチームだった。
試合は変則の30分4本マッチなどの形式で行われるため次々と選手交代が行われた。
桜井健一が出場したのは4本目の残り15分からだった。練習試合とはいえ、プロでの初試合に身体の全身は緊張に襲われた。
その影響からか、味方からのバックパスが来たので返そうとして蹴ったら相手選手に渡ってしまった。
パスを奪った相手は猛然とドリブルを仕掛けてきてゴールへ迫ってくる。パスミスによるネガティブな感情が一瞬、頭をよぎったが、ゴールを守るという感情が勝り、一気にアドレナリンが頭から身体の全体に溢れ出す。
気がつくと、ボールを運んできた相手選手とのゴール前での一騎打ちの場面を迎えた。いわゆるサッカーでゴール前の一対一の場面というやつだ。
ゴール前の一対一は攻撃側がシュート、パス、ドリブルのいずれかを選択でき、シュートする場合も、タイミング、角度、速さが自由自在のため圧倒的に有利だ。言い換えると、ゴールキーパーにとっては絶体絶命の状況ということである。
桜井はシュートに備えて身体の全体で相手との間合いを詰めてシュート角度を消しに行く。
相手選手がシュート放った瞬間、シュート方向に身体が反応してブロックした。
ブロックしたボールは桜井の身体を越えてゴール方向へと向かっていく。このまま、ゴールに吸い込まれてしまうかと思ったとき、味方のディフェンダーが追いついて大きく前方へ繰り出してクリアした。
ファーストタッチが失点に繋がらなくてよかった。ベンチを横目で見ると、監督は渋い顔で首を横に振り、ゴールキーパーコーチは声を荒らげている。
後で怒られるのかな。怖いからベンチは見ないでおこう。
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