第3話
入寮翌日からチーム練習が始まった。西東京アルケミストFCはプロサッカーリーグで一番下のカテゴリーであるN3に所属しているチームにため、台所事情は厳しい状態である。
そのため、シーズン前の練習は暖かいところでキャンプではなく、ホームの練習グラウンドで実施されている。
ただ、高校、大学、大学卒業後と決して恵まれた環境でプレイしてこなかった桜井にとっては、この練習場は設備が整っていて、専属の用具スタッフがいるので天国だと感じた。こんなところでプレイできるなんて俺は恵まれている。
フィジカルトレーナーによるチーム全体への指導が終わると、いよいよポジション別の練習に入った。
このチームのゴールキーパー登録は桜井を入れて3人。レギュラーはA代表経験のあるベテランの川田さん。2番手は昨年ユースから昇格した野沢だ。彼はチーム内で将来が期待されている逸材のため川田さんからマンツーマンの指導を受けており、昨シーズン後半には出場機会も与えられていた。そして、第3ゴールキーパーが俺こと桜井健一だ。
現在のレギュラーは川田さん。次世代のレギュラーは野沢というのがチーム内の暗黙の方針になっているため俺が入り込む余地はない。
そのため、練習では主に2人のサポートに多くの時間を割かれた。俺の立場からしたら仕方ないことなのだが、これはかなりきつい。
俺がゴールキーパーとして練習ができるのは、全体練習後の居残りでシュート練習をする選手の相手をするときだけだ。このような日々が毎日続く。
限られた時間しか練習することはできないが、練習相手がこれまでよりは圧倒的にレベルの高いプロなので、短時間ながらも俺のゴールキーパースキルは少しは上達したような感じがする。しかし、俺が試合に出れる余地はチームには無かった。
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