第2話
翌日、桜井健一のN3リーグ所属の西東京アルケミストFCとの契約がWEBサイトで発表された。WEBサイトを見た地元ローカル紙が小さい記事をWebと紙面で出したがそれに反応する知人はいなかった。
俺自身はというと、コンビニでスポーツ新聞を全紙買ってきて隅から隅まで目を通して自分の記事がないかを確認した。しかしながら、掲載されていたのは1紙のみ。それも、契約選手として箇条書きで書かれているレベルだった。そもそも、期待する方が間違っているのだが、頭とは裏腹に気持ちは目立ちたいという感情が俺の中にはあるようだ。
サッカースクールコーチのシフト調整は、後任がなかなか見つからないとのことで、少し手間取ったが、事情を話すとスクール代表は快く受け入れてくれて餞別までくれた。この人からの恩を少しでも返せるように第三ゴールキーパーとしてチームに貢献したいと改めて思った。
住んでいる場所などの身辺整理を済ませて、チームが今シーズンの指導を開始する前日に入寮した。
寮には昨シーズンから既に入っているメンバーが8人。今シーズンから新たに自分も含めて5名が入ることになっているようだ。
大学卒業して数年経っている自分は寮の中では最年長に近い部類で、部屋の片付けをしてラウンジに顔を出すと、急に緊張感が生まれていた。
「今日からお世話になる桜井です。よろしくお願いします」
とりあえずは、コミュニケーションのために軽く挨拶すると、「伊達です。佐竹です。里見です。武田です。小笠原です」と若者たちは名前だけ名乗って返してくれた。
年長者に対して冷たい反応。よくわからない相手だから仕方ないのだけど、俺はこの環境でやっていけるのだろうか。不安しか感じない。
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