第29話
地球上で銀メタルシャビドが悪の大魔王的スタンスで人体実験布告を行っているころ、木製近辺での機械知性体と傭兵による連合艦隊との戦闘は圧倒的にシャビードローン有利の展開で続いていた。
いや、続いていたというのは語弊がある。
機械知性体達は退路を断たれ、シャビードローンの手の平の上で最後の命を燃やし尽くされていた。
『ジャンプゲートが閉じられただと!?』
『シャビードローンがジャンプゲートを襲撃しやがった。退路を断たれた!』
『逃げ遅れた! クソがぁぁあ!』
『もうダメだ! 降伏しろ! こんな戦闘、やってられねぇ!』
『磨り潰されるだけだ! 打ち方、止めぇぇ! 機関停止! 降伏勧告を受け入れろ!』
傭兵艦隊の一部が逃げ遅れ、エルフ族の艦隊に包囲され降伏勧告を受け入れた。
一方機械知性体等の艦隊は最後の一兵まで戦うつもりで、未だに戦闘は継続中だ。だが、その中にブランクブレインの保有する強力な戦闘艦は存在していない。
なぜならば、地球上でノージャ・ロゥリーやシャビドが機械知性体が運営するゲームで遊ぶな、と勧告しており、各国が死に物狂いでプレイヤーを探し出してゲーム世界から引きずり出したからだ。
機械知性体の口車に乗せられ、地球での肉体を捨て電脳の存在となった地球人も、機械知性体の艦隊から離れ、エルフ族の元に投降していた。
こうなると、機械知性体等が太陽系において勝つ手段は一つたりとも無く、シャビードローンによるラムアタック攻撃に磨り潰されていった。
シャビードローンは旗艦級20隻を用いて太陽系に存在するジャンプゲートを襲撃し、これを機能停止に追い込んだ。そしてそのままジャンプゲートを基礎とした船を作り始めていた。
『完成したら、名前は何にしましょう』
「シャビドジャンパーでいいんじゃない?」
『この船が完成したら、シャビドジャンプ金属で作られていない船もシャビドジャンプと同様に飛ばせますね』
『それに飛ばせる距離もかなり伸びます。前の拠点からの移動が楽になります』
『太陽系付近の星系をすべて支配下におけますね』
直径200km程のリング状になっているジャンプゲートをまるっと取り囲むように、シャビードローン達がせっせと資材を運び込み、船を組み立てていく。ミツバチの群体が飛び交うように、建造ドローンや配送ドローンがそこら中を飛び交い、瞬く間に何かが作り上げられて行く様はまるでタイムラプスでも見ているかのようであった。
『ジャンプゲートをこちらで封鎖したから、とりあえずは太陽系に入って来られる手段はかなり絞られるね』
『侵入ルートが限られるから、そこに罠を貼っておけば、太陽系の防衛はほぼ完璧じゃないかな?』
『ワープ妨害フィールド発生装置を張り巡らして、遠距離狙撃ドローンを外側に配置すれば、一方的に攻撃できるかも』
『万全を期すなら、機械知性体のサーバー星を何個か落として、こちらとの戦力差を思い知らせてやれば怖がって手出ししてこなくなるかも?』
『となると、もう何個か星系を掌握して資源の備蓄を増やしたいな』
『主様に許可を取ろう』
「いいぞ。好きにやれ。ほどほどに好きにやれ」
『わーい! なら太陽系を中心に周辺の星系調査の開始だー』
数隻の旗艦級と数百隻の戦艦からなる戦闘艦。そしてその十倍近くの工作艦及び採掘艦が複数グループ出来上がり、続々と宇宙の彼方に光り輝く星々の方角へと飛び立っていく。
先行してワープ速度特化の探索艦を太陽系から見える全ての星に対して出発させており、その探索艦から送られてくる座標に順次飛んでいく形になる。
いくつかの星系には既にたどり着いており、採掘も物資の輸送も始まっていた。ハビタブルゾーン内に惑星が存在しない星系に関しては資源用星系とし、恒星もダイソン球化してエネルギー利用する事となった。
時々見つける生命体についてはエルフ族に対応を丸投げし、シャビードローン達は戦力の拡充のみに注力する。
それと同時に、宇宙空間内における巨大なコロニーの建造にも取りかかった。
これは地球上から手に入れた実験体の実験場でもあり、今後宇宙空間に地球人の居住地を作り出すための下地にもなる。
「忙しくなるなぁ。早く落ち着いてアニメでも見ながらのんびり過ごしたいよ」
シャビドは久しぶりに義体から降り、自分の船であるシャビードローンの総旗艦に移っていた。頭の中では十万光年先の銀河の端っこでシャビードローン達が行っている資源採取の状況や、地球の大気圏内で飛び回って民間航空機を取り囲んで遊んでいるシャビードローン達など、すべての情報が集まってきていた。それらすべてを完全に把握し、やろうと思えば全てのドローンに対して何かしらの指示を投げかける事も出来る。
自分がそんな存在であることにシャビドが疑問に思うことはない。
『アニメが視聴したいのでしたら、動画視聴サイトをハックしましょうか?』
『地球のセキュリティ甘々インターネットなら我々でも余裕で制御下に置けます』
「いやいや。アニメは今後も末永く発展してもらわないといけないから、しっかり金は払う……良い事を思いついたぞ!」
シャビドは全長50kmはありそうな巨大な船をブルリと震わせた。
「我々がアニメ会社に出資してアニメを作らせてやればいいのだ! 給料を高くして超ホワイトアニメ制作会社にしてやろう。機械知性体の使っている技術も流用して、例えば思考した映像を外部に出力するとか、そういうのもやれるかもしれない!」
『主様。なんでも我々が手を出すと主様の自由時間がなくなりますよ。そういうのは地球人にやらせたらどうですか?』
『こういう研究しなさい。材料はこれ。っと資金を渡せば、あとは勝手にやるのでは?』
『時々見に行って管理しておけばいいと思います。主様が主導で動くほどのモノではないかと』
「……そう?」
『それに、主様が深くアニメ制作に関わると、結末なども先に知ってしまうのでは?』
『ネタばれ? という奴になってしまうのでは? それでは楽しめないのでは?』
等々、シャビードローン達から「アニメなんかより僕たちを構って」と説得を受け、アニメ制作会社に関わることは止めたシャビドであった。
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