第27話
シャビドとノージャ・ロゥリーの電撃訪問から一夜が明けた。
世界中のテレビ局では地球の至る所で見られるようになったシャビードローンの姿や、日本国首相と共に映るシャビードローンの代表者であるシャビド。そしてエルフ族の統括族長であるノージャ・ロゥリーの姿が映し出されていた。
「ではここでノージャ・ロゥリー氏が語られた機械知性体の狙いと、宇宙法にある未発展惑星保護法に関して話をまとめてみましょう」
「まず、機械知性体及び機械生命体。そして宇宙人類の上位階級者、所謂”貴族”達が我々地球を狙う理由についてです」
「これはエルフ族が調査した結果、地球でのペットファーミング事業であると判明しています」
「細かい話は局のホームページにまとめさせていただきましたが、これは要するに、地球でいうところの奴隷でございます」
「機械知性体や機械生命体。そして貴族階級にいる者たちは、宇宙人権法や未発展惑星保護法などの法律の目をかいくぐり、奴隷を手にするために地球への侵略を試みている、とのことです」
「宇宙人権法は奴隷の存在を認めていますが、その奴隷にも人権は存在します。機械知性体や貴族などが手に入れようとしているのは、これら宇宙人権法が及ばない、人権の無い奴隷になります」
「ペットファーミング事業のペットとは、人権を持たない、動植物などと同じ枠組みの知的生命体のことを暗喩するものです」
「機械知性体や宇宙人類の貴族階級にいる者達は、人権のない知的生命体に対して言葉にするのも憚られるような扱いをしています」
「我々のような知的生命体が消耗品の様に使い捨てにされているのです」
「ノージャ・ロゥリー氏率いるエルフ族は知的生命体の保護を種族の責務として活動を続けられています」
「では、なぜ機械知性体等や貴族階級に居る者たちが人権の及ばない知的生命体を欲しているのでしょうか」
「色々ありますが、もっとも多いのは知的生命体にしか出来ない極秘の作業を行わせることです。未発展惑星の知的生命体はナノマシン等の投与もされていないため、様々な政治機関及び諜報組織並びに政府の管理下にありません。これは盗聴やハッキング等の恐れが全く無いということになります。つまり悪い事をする連中からしたら垂涎の代物です。連中にとってはこれほど都合の良い生命体はいません」
「逆に言えば、宇宙人類はナノマシンの投与を受けており、その生命の安全を保障される代わりに、管理下に置かれていると言えます」
「このナノマシンにも等級が様々でありまして、先ほどのような盗聴機能や居場所の特定等のナノマシンを投与されるのは余程の犯罪者などですので、一般的な方々にはあまり関係のない話ではあります。ですが、悪い事をする連中というのはそういった細かい部分にも気を張ります」
そんな機械生命体や宇宙人類の貴族階級にいる者達がなぜ地球を狙っているのか、エルフ族からコメンテーターを招いて解説する番組は高視聴率を叩きだした。
変わって別の国では「勝手に日本国が地球をシャビードローンに売り渡した。謝罪と賠償を請求する!」と国民がデモを起している様子が中継されていた。
また別の国では「自分達の国は自分達で守る。宇宙人の庇護なぞいらん!」と盛大に自爆テロなどを巻き起こし抗議活動をする中継が流されていた。
宇宙人からの技術供与によって既存の技術が陳腐化するのではないかと、技術系や製薬系の株価が連日ストップ安を記録するなど世界は日に日に混乱に陥っていく。それと同時に、世界的なデモ活動も一気に広がり、当初の交渉がダメだった、という日本への責任転換へと世界中が流れを変えていた。
だが、その流れはシャビドの言葉と行動で一気に沈静化した。
「従わない奴は好きにしろ。邪魔する奴は滅ぼす」
日本国首相に拝み倒されて出席した記者会見の席。あまりにも注目されているため、室内に人が入りきれないがゆえに野外に会場が設営されていた。世界中から集められた記者からは厳しい質問が飛び交う。その中でも特にシャビドに対して酷い質問をした記者がいた。
今までそれなりに友好的な態度で接していたシャビドであったが、この時ばかりは人工筋肉で完全に制御されているであろう筈の頬が引きつった。
シャビドはその記者に対して”にこり”と微笑んだ。
突如、空が暗くなったかと思うと、巨大な宇宙船が記者会見の会場上空に現れる。雲を押しのけて現れたそれは、シャビドが作り上げた全長20kmを超える巨大な旗艦級艦船だった。
空いっぱいに、鮮明な映像が映し出される。それは宇宙から地球を見下ろす画面と、宇宙空間に無数にいる宇宙船が映し出されていた。
その宇宙船の側面が一斉に瞬く。そこから発射された何かが地表に降り注ぎ、望遠レンズで拡大された地表では盛大に土煙が巻き起こっていた。
「とりあえず、お前が気にくわないから見せしめだ。次はお前も殺す」
シャビドの言葉通り、記者が所属する国は地球上から消失した。実際にはその国の首都などの主要な都市が宇宙空間からの艦砲射撃により破壊されたので生き残りはいるかもしれない。だが、完全に国の機能としては停止してしまった。いくら地下に隠れようと、宇宙空間からの艦砲射撃で地下深くまで掘り返されては生存は絶望的だ。
この衝撃的な映像は世界中に流された。
「何か勘違いしてるようだが、地球人に拒否権はない。ブーブー文句をいうだけなら何もしないでおいてやるが、私の気に障った時がお前らの最後だと思え」
静かであったが怒気の籠った声。だがシャビドのこの発言に対して一部の記者から罵倒が飛び交った。しかし、即座に発言した記者の国が文字通り消えることとなったため、最終的には誰も発言する者がいなくなった。
この瞬間だけで、地球の人口が10億程減った。
日本海の向こう側の大陸に物凄く大きなクレーターができたことが宇宙からの映像で確認できたため、地球人は黙るしかなかった。シャビドの隣に佇む日本国首相は笑顔のまま機能を停止していた。
「いいか。私はシャビードローンという種の中でも稀に見る穏健派だ。人体実験も最低限しかやらない。生きたまま解剖されるのが嫌なら従え。私じゃなければ、わざわざこんな話し合いの場を設けるはずがない。即座に地球は人体実験場になるぞ」
シャビドは静まり返った観衆を見て笑顔を浮かべる。
「まぁ、私たちが経済とか色々と迷惑かけてるようなので、助けて欲しいやつらは助けてやる。その代わり、働いてもらう。衣食住の面倒は見てやる」
シャビドの映像にまた別の超巨大な宇宙船が十隻ほど地球の大気圏へ突入する様が映し出される。
「世界中の適当な海にうちの船を停泊させる。たどり着く方法は各国で考えてくれ。この船内では誰しもに衣食住を提供する」
映像には一人用の個室からLDKの家族用居室。公園。レストラン。映画館やボーリング場、アミューズメントセンター等々。まるで豪華客船のような宇宙船の船内が映し出されていた。
「訪れた者にはナノマシンの投与を行う。不治の病も治るし、今後一切病気にもならない。言語の壁も無くなるから多種族同士でコミュニケーションに困ることもないだろう。そして余程のことがなければ、100歳までの寿命を補償する」
ただし、とシャビドは付け加える。
「老若男女問わず、センスの有るなしに関わらず、子どもから大人まで、全員に働いてもらう。我々シャビードローンのドローンパイロットとして、ね」
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