第13話
『そこの所属不明艦! 止まれ! 武装を解除しろ!』
「え? え?」
突然船の操縦画面上に現れた警告文字と怒鳴り声に私は盛大にビビりちらかす。
シートベルトをしていなかったら放り出されるような衝撃が船体を襲った。
『臨検する! 抵抗はしてくれるなよ!』
警告画面と共に『強制ハッチ解放』という音声案内がけたたましく繰り返された。それと同時に、船内の電源が落ち、非常灯の橙色の明かりが辺りを包む。
これは死んだか。一体何がダメだったのか。シャビードローンだと一瞬で見抜かれたのか。
そんなことを思いつつ、シートに背を預けて大人しく待つことにした。
心の中は落ち着いており、自分に死が近づいているかもしれないと考えても、それほど恐怖に駆られることはない。
しばらくすると、ドカドカという音が扉のすぐ向こうで聞こえ、続いて無骨なSFっぽい銃を手にした男達が乗り込んできた。
「ノックも無しに無粋じゃない?」
最後の言葉になるかもしれないので、せめて小洒落たことでも言っておこうと、笑顔で入ってきた男に言ってみた。
すると男は武器を構えたまま真剣な表情で口を開く。
「火器管制システムを作動させたままコロニーに近づくアホに言われたくない」
「……え?」
「……本当にただのアホだったか」
男達がドカドカと近づいてきて、私を拘束する。両手に腕輪をされ、足にも鉄輪を嵌められた。さらに首筋のソケットに何かを刺されると同時に、体から力が抜ける。
男の一人は船の操舵コンソールに端末を繋ぎ、何やらピコピコやり始めた。もう一人の男は私の写真を端末で撮影する。
私は黙って事の成行を見守ることにした。
「確認が取れました。タユマタンでの大規模戦闘において行方不明となり、一年ほど前に死亡判定された船員です」
「機体についても確認が出来ました。歪な修復痕等ありますが、当事者が搭乗していた船で間違いありません」
私は地面に寝転がされたまま、男達を見上げる。
リーダーと思われる男は私を見下ろし、「連れていけ」と一言だけ呟いた。
こうして私は、人類種のコロニーに侵入することに成功した。
ただし、そこは鉄格子の大変似合う、狭い独房であった。そして事情聴取が連日、朝早くから夜遅くどころか、ぶっ続けで何日も行われた。
もし私がサイボーグ化していなかったら、途中で無実の罪を認めているところだ。
「そんな馬鹿な理由が通ると思っているのか!」
「そうはいっても、覚えてないものは仕方ないじゃないですかー」
私のマジカルチート炉が導き出した言い訳は、『記憶が無いので何も覚えていません』である。自分が何者であるかも分からず、過去の記憶をすべて失い、気が付いたら船に乗っていたことにした。船の操舵は色々触って覚えたため、火器管制装置はおそらくその時に起動したものだと言い張った。
「では、どうして貴様はタユマタンとは全く別のリージョンに忽然と現れ、このコロニー目掛けてまっすぐ進んできたのだ? 誰が船を修理した? この期間何をしていた?」
「覚えてないです」
「ふざけるなぁ!!」
机をばしーん、と目の前で叩かれ、私は涙目になってビビり散らかす。
屈強で強面な男に怒声を浴びせられ、人間だったころの私なら土下座して許しを請う案件だ。
だが、この体が備えているツヨツヨハートは、そのような罵声を浴びせられてもへこたれない。大きな音にビビって涙目になることはあっても、男の言葉が精神を蝕むことはなかった。
「そんなー」
体を小さくして上目遣いに、少し涙を浮かべながら媚びを売る。
「素直にキリキリ吐かんと、いつまでもここから出られんぞ!」
私の媚びは全く効果がないようだった。
私はしょんぼりと肩を竦め、俯くしか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます