「靴屋と小人」

羽瀬川由紀

第1話

まだ町の人達が寝静まっている夜更けに

小人が一軒の靴屋の屋根裏部屋から下の階へ

降りてきました。

小人が降りてきた二階は靴屋の一家の住居スペースになっており、靴屋の一家を起こさないようにそろり、そろりと廊下を歩き

一階の作業部屋に向かいました。


作業部屋に着くと小人は靴屋の主人が

作りかけの靴の完成予定の図面を見ながら

仕上げていきました。


革布に糸を通した針を一針、一針縫っていき

形を整えていくと 靴紐を靴に通して

仕上げに白樺の葉を束にしたものを

出来上がった靴にポンポンとはたいて

新しい持ち主への幸運と心が落ち着く香りを。


男性の靴には白樺、女性の靴にはバラの花束を、子ども達にはチューリップの花束で香りが届くように。


小人の先祖が靴屋に住み始めて120年


小人の代で3代目になりました。


小人の家族みんなで夜明け前まで靴作りを

していきます。


小人のおじいちゃんからお父さんに


お父さんから小人に靴作りの方法が伝わって


いきました。


今日は小人にとって初めて一人で靴の仕上げをした日でした。


仕事道具を片付けて小人達が住んでいる屋根


裏部屋に帰る間も 明日靴屋の主人が


驚きながらも嬉しそうに笑う姿が


もしかしたら見られるかもしれないと思うと


ワクワクしながら屋根裏部屋に続く梯子を


登っていきました。


窓の外は夜明けがすぐそこまで近づいていました。

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「靴屋と小人」 羽瀬川由紀 @yuki024

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