【不死 VS 不死】 Act.10


 僕は2年寝ていたそうだ。

 丸まったままピクリとも動かない僕を見守るために、レオは家のはす向かいにある肉屋に勤めて、とにかく時間を作って僕の側にいたって。

 その間スターリングシルバーは休業、みんなそれぞれスポットで警備や警護、討伐をしてた。

 2年も現場を離れてたら当然僕もレオも鈍ってて、すぐに復帰なんてできなかったよ。

 僕なんかまったく動いてなかったから、ひどいありさまだった。

 元に戻るのに1年以上かかってしまった。

 それまでの間、人間も猫もひとりも1匹も欠けてなかった。

「よーし、スターリングシルバー再始動だ!」

「うっしゃあぁ!」

「また暴れるぞ!」

 レオの家、みんな集まって力一杯拳を挙げて、今日はパーティーだ。

 ティアマトの煮込みやフライ、キラーヘッジホッグのロースト。ローズラットのシチュー。

 ハムやソーセージはお肉屋さんからの復帰祝い。

 スターリングシルバーは町の英雄、誇り。

 誰もが再始動を心待ちにしてた。

 みんな葡萄酒で乾杯して、料理をムシャムシャ。

「ところで、さっそくなんだがギルドから依頼が来ている」

「ビーストでも何でも来い! ノーライフキングを倒した俺たちに不可能はないぜ!」

 僕らがノーライフキングを倒したことは誰も知らない。

 討伐証明がないからね。

 何もかも残さず焼き殺したから。

 神聖魔法で倒さないと出ないんだよね、血晶。

 でもあの時点でノーライフキングは生き物だったから、神聖魔法浴びせると回復しちゃう。徹底的に火で押すしかなかったんだ。

 あのまま2か月間町に滞在して、ヴァンパイアが1匹も出ないことを証明して、任務は完了。成功報酬を受け取って帰投。

 ずいぶん儲かったみたい。

 アンデッド、特に伝播するやつは殲滅報酬高いから。

「今度は何なんだ?」

「ゾンビの殲滅」

「またアンデッドか!」

 めんどくさいなー。マスター倒さなきゃ殲滅できないし。

 死体を生き返らせる呪いを使った違法魔術師も捕まえないと、また作られてしまう。

 ヴァンパイアより嫌いだ、露骨な悪意の具現なんて。

「まぁ、奴らが火と神聖魔法に弱い以上、俺らに話が来るわなあ」

 みんな火魔法や神聖魔法のレベルがものすごく上がって、すごいらしい。

 バルは大司教様と並ぶくらいの神聖魔法使い。ルイにはかなわないよって笑うけど、君はまだ28才じゃないか。とてもすごいことだよ。

 人も猫も火魔法ハイレベル。

 さらに猫たちはフレイヤ様から好きな魔法やスキルをひとつずつ授かったし。

 衝撃魔法とか拘束魔法とか、攻撃補助とか、それぞれ。

 カイリはシールドをもらった。

 何が何でも是が非でもバルを守るという強固な意志に頭が下がるよ。

「場所は?」

「アンバラタウンだ。長逗留になるからパンツを5枚以上持てよ」

「俺は清潔な男だ、7枚持っていく」

「じゃあ俺は8枚だ」

「無駄に荷物を増やすな、そこ」

「ルイが持っていってくれるさ」

「むさ苦しい下着なんて運ばないよ。自分で持つのが嫌なら頭に被って行くのはどう?」

「変態だろ!」

「ところでルイ様」

「何かね、デニーくん」

「何か一品足りないのでは」

「……ああ、ポイズンクラブ」

「左様にございます」

「んー……戦争になるかもと思って、出さなかったんだよね」

「戦争?」

「17匹しかないんだ。6人で3匹ずつ分けると1匹足りない」

「ポーカーだ!」

「ブリッジにしろ!」

「冒険者らしく腹筋だろ!」

「それじゃ圧倒的に魔術師が不利だ!」

「じゃあポーカーとブリッジ、どっちにするかじゃんけんで決めたらどうだ?」

「だったら最初からじゃんけんでいいんじゃねえ?」

 みんなが構えたけど、レオはそんな様子もなく葡萄酒飲んでる。

「おい、レオ、何やってんだ。試合放棄か?」

「さすがだ、自ら身を退くことで争いを鎮める。レオこそ真のリーダーだぜ」

「そんな気はさらさらないよ。私はルイのバディだからシード権があるんだ」

「うわ、汚え!」

「リーダーなんだから公平にしろ!」

「そうしたいところだが、ポイズンクラブは別枠でね」

 みんなで揉めてるとこに猫たちが来た。

『ルイ、俺たちにも何かくれ』

『いろいろ食べただろ?』

『察しろ』

『——あー、あれね』

 マタタビを2個転がした。

 あっという間に酔っ払い猫が5匹。

 もちろん僕も酔っ払っちゃう。

 しあわせだー。

 ぼくはこのぱーれいにはいっれ、ほんろうにひあわれら。

 れおのわれぃにらえて、ほんろういひあわれら。

「あっ! ルイがマタタビ吸ってる!」

「こらー! ポイズンクラブを出してから酔え!」

「ダメだ、完全にできあがってる」

「アスラン、通訳してくれ!」

 みんあ、さわいれるへろ、きいひあい。

 ひあわへ、かいひめれるんらかあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生黒猫の日常生活 氷柱 @b-luck-cat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ