【終焉】 Act.9
やっと現場に出るようになったグレイ、さすがに鈍ってて最初は大変だったけど、すぐに遅れを取り戻して、着実にランクアップしていった。
何代かにひとりは出る恋愛音痴だったから、結婚が大変だった。
お見合いの話は山ほど来てるのに全然選べなくて、会ってみればいいのに腰が引けてるし、スミスさんに頭痛を起こさせてた。
それでも何とかかんとか、とてもステキな女性とご縁があって、子どもを4人もうけた。
子どもたちは平等に育って、お医者さんや弁護士や回復術士になった。
奥さんと子どもたち、孫たちに見守られて、グレイは76才で永眠した。
長い間民のために尽くしたと、王様から弔辞がきた。
お葬式も済んで、戦闘魔術師の名門、ヴァルターシュタイン一族の本家は完全に歴史に幕を下ろした。
「さて、ルイ、君はどうするのかね?」
僕が知ってる7人目のスミスさん。代々引き継いだヴァルターシュタイン家顧問弁護士の役目は終わった。
「旅に出ようと思うんだ」
「やっぱり行くんだね」
「僕は知らないことが多すぎる。知らない世界を見てみたい」
「みんな寂しがると思うがねえ」
「別れは世の常。ついさっきお葬式したじゃないか」
「なるほど、正論だ」
「衣食住……食住、じゃない、住が保証されない生活は初めてだから、覚悟がいるんだけどね。気がついた時から誰かがいて守ってくれた環境から野良猫になるんだから」
「確かに勇気がいる。強い猫だね、君は」
「それじゃ、僕は行くよ。すべて見届けたからね」
「いい旅を、ルイ」
スミスさんに頭をなでてもらって、その手に頬ずりして、僕は振り返らずに走り出した。
僕はいつだって前を向く。
ステラが、マリスが、ロランが、代々のヴァルターシュタイン家の人々がそうだったように。
その勇敢な魂は僕の中にある。
永遠に。
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