第5話 一ノ瀬あかりと吉田あかり

「あのさ」僕が話しかける。僕から人に話しかけるなんていつぶりだろう。そんなことを思いながらも彼女にたずねてみる。「なんで吉田さんはそんなに優しいの?」僕が聞く。「そんなの一つだよ。君が好きだから」僕はその言葉で一瞬頭が固まった。でも吉田さんは続ける。「もう忘れちゃったかな?私一ノ瀬あかり」その言葉が頭に響く。「本当にあかりなの…」彼女は元気よく「うん!」と答えた。なぜか涙が止まらない。マスクをしていてショートカットになっていたから全然気づかなかった。「私転校してから気づいたの。あおいのことが好きだって」彼女も涙目になる。あかりと再開したんだ。その事実にまだびっくりしている。でもそれより幸せを感じている。そんな気持ちで学校につく。またクラスでいじめられる。でもそんなことより幸せを感じる。またあかりに救われた。あかりはいつでも僕のヒーローだ。

放課後あかりを僕は呼び出した。告白するつもりでいたのだ。でもあかりの横には沙奈がいた。沙奈がいるせいでなにも話せない。「ごめん急用できた」自分が呼び出したのにそんな無責任な言葉を放って逃げ出した。なにも考えずに家に飛び込んだ。家に帰って気づく。なんて無責任なんだろう。あかりに嫌われてないかどんどん心配になっていく。でももう手遅れだ。時間は巻き戻らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る