第3話  過去の記憶

僕は小学生の頃、今と同じようにいじめられていた。クラスのみんなから無視され、机に落書きもされた。でも僕はなにも出来なかった。先生も見て見ぬふりをした。僕を助けてくれる人はだれもいなかった。きみだけをのぞいて。あかりだけは僕になんの戸惑いもなく話しかけてくれた。僕はその瞬間救われた。今まで友だちができなかった僕は思わず声を上げて泣いてしまった。その瞬間僕のことをいじめていた奴らがびっくりした顔でこっちを見た。こんなにも人の前で感情を出したのは初めてだった。とてもスッキリしたのを今でも覚えている。でも昔と今では違う。今は僕を助けてくれる人なんて誰もいない。いつまでこんな生活が続くんだろう。そんなことを思うけど僕はなにも言えない。自分がとても弱く感じる。あかりにそばにいてほしいと思う。あかりがいたときはなにも思わなかった。でも隣にあった笑顔がなくなってからあかりの大切さに気づいた。何度もあかりがいたらと考えてしまう。あかりに対する気持ちが大きくなっていくのを感じる。でももう遅い。もうあかりはいない。なぜ僕はあかりの大切さに気づけなかったんだろう。そんな事を考える。この気持ちはどうやったらおさまるだろう。きっと何をしてもおさまらない気がする。それほど今はあかりが恋しい。また会えないだろうか。そんな現実味のないことを思ってしまう。ふと我に返ると目の前に吉田さんの姿があった。笑顔で話す吉田さんを見るとなぜか僕は懐かしく感じる。きっとさっきまであかりのことを考えていたせいだろう。でもやっぱり彼女はどこかあかりと重なるところがあった。

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