第9話 『9 騎士団長は怒られる』

『9 騎士団長は怒られる』


 シュネルが王都の外で核熱炎の魔法を放ったことで王都は救われた。

 あの爆発を見ていた騎士団と冒険者パーティー達は、魔族が燃えてしまった光景に衝撃を受けていた。

 ファイト団長ですら、言葉を失ったほどの場面だった。

 ファイト団長は聖騎士ガナドルとともに王都の城に呼ばれる。

 城にはフライ国王があり、呼ばれたのは今回の魔族の討伐についてと察しが付く。

 フライ国王がファイト団長に聞く。


「ファイト団長に聞くが、今回の魔族の侵攻は驚異であった。それを全滅させたのは喜ばしいことだ。魔族を一撃で大爆発魔法で討伐した

らしいな」


「はい、見ていましたが、一発の火魔法が落ちてきて破滅させました。一匹残らず死にました。誰が魔法を使ったのか不明です。騎士団の者ではないです。あの火魔法は最上位魔法でしょうから、相当な魔術師であることは間違いないです」


「誰か不明なのはずないだろう!! そんな強烈な火魔法を使えるのがわからないというのは、恐ろしい。もしも私の命を狙ってきて城に放って来たらどうなるんだ」


「それは、えっと、城は燃えてしまいます」


「危険すぎる! 早く探せバカ者! お前は何のために騎士団長をしているのだ!」


「すみません国王、直ぐに調査します」


 ファイト団長はこっぴどく説教される。

 フライ国王からしても誰かわからない以上は、不安であった。


「聖騎士ガナドルは誰かわかったのか?」


「いいえ、魔術師に心当たりはありません」


「早く探せ!!」


「はい!」


 聖騎士ガナドルも同じ理由で説教されたが、国王には逆らえないので頭を下げる。


「冒険者パーティーでもなさそうですよ国王」


 そこへ勇者クリシスが入ってくる。


「おお、クリシスか。クリシスが放った魔法ではないのか?」


「俺ではないです。しかしすげえ魔法でした。見たことない火魔法だった。冒険者ギルドに確認しましたが、それらしき人物はいません。まあ騎士団長も助かったでしょうね、その人が火魔法を使わなかったら、王都は危険でしたからね」


「うるせえ、クリシスだって同じだろう」


 勇者クリシスに指摘されて文句を言う。


「勇者クリシスでもないなら、冒険者でもないか」


「冒険者でないけど、あるとすれば、それは一つ」


「ガナドルよ、なんだ?」


「暗部団なら可能性はあると思います。なぜならあの爆発の火魔法を使った時に暗部団の目撃はありました」


「暗部団か。ビラータか」


「わかりませんけど、騎士団の情報ではビラータ、剣士リデル、魔術師ルフィーシャは現地にいました。だがあの3人にあの火魔法を使えるかは微妙です。それともう一人いたとも目撃がありました。誰かは不明です。もしかしたらその人物が放った可能性があります」


 聖騎士ガナドルは部下から情報を集めていた。

 その情報には暗部団の情報もあった。

 火魔法を使ったのが、解雇したシュネルだとは想像もしていない。

 解雇したシュネルによって王都は数われたとも。


「暗部団かよ、あのバカのリデルじゃねか。クソ女ならやりかねない。今度会ったら言ってやろう」


「剣士リデルは騎士団にいたんだよな。ファイト団長とケンカして解雇したんだっけか」


「うるせえよ、クリシスだって、暗部団のビラータ団長とケンカしたのだろう。お前だって同じだ」


 暗部団の存在は一般的には知られていない闇の組織であるとされているが、ファイト団長と勇者クリシスは暗部団をよく知っていた。

 元は仲間だったからだ。

 闇の組織であるため活動は地下で行う。

 冒険者パーティーが表の世界で活躍するのとは逆に裏の活動をしていた。

 暗部団はフライ国王も知っていた。

 なぜなら暗部団の活動資金は弟のエド王弟が出しているからだ。

 エド王弟はビラータが勇者クリシスとケンカして追放されたのを知り、裏から協力するとした。

 フライ国王とエド王弟は意見が合わないのは良く知られている話で、兄フライ国王が強権政治をするのを良く思っていなかった。

 それはビラータが有能な人物だと知っていたからで、暗部団の創設に関わる。

 しかしまだここにいる者はシュネルの能力だと知らない。

 ファイト団長も聞いていないのは同じ。

 自分でシュネルを解雇したけど、まさか解雇したシュネルが核熱炎で魔族を討伐したとは想像もできないのだった。

 

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