言わないと、決めた。朝

ももいくれあ

第1話

今朝もまた、知らぬ間に身の回りが散らかっていた。

食べ散らかした跡があった。

ぼんやりした記憶の奥で、重くなった胃を抱え、

軽い頭痛にこめかみを抑えて、前かがみにうなだれた。

吐きたくて、吐きたくて、

酸っぱい胃液が後から後から追いかけてくる。

過食症のレールに乗ったワタシの朝は、

まだ薄暗いうちに始まっていた。

睡眠薬で眠らされているカラダに、

ムリヤリ押し込まれる大量の固形物たち。

カラダは、寝ていた。

勿論、ココロだって、まだ寝ていたかったはずだ。

ここ数週間は、続いている。

この闘い。激しさを増してきていることに、

薄々は気づいていた。

それが、昼も、夜も、やってくるようになったからだ。

とにかく、押し込む。

食べたくは、

なかった。

でも、

食べずにはいられなかった。

それを、その事を、口に出す事すら、許されなかった。

周りを、不快にするから。だった。

だから、1人で、耐える。

ワタシは、そう、

決めた。

今回の過食症に関しては、そう、決めたのだった。

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