第25話 神宝の農機具?
天孫族は、ヤタガラスの協力でなんとかヤマト目前まで迫った。しかし結局天孫族は、宿敵長髄彦に勝つことができなかった。そこで神武は長髄彦に天孫族は難民で戦意はなく、ヤマトを乗っ取る意思はないとの使者を送った。
長髄彦もさすがに理解するが、出雲の恩義と義理のために停戦は合意しても握手まではふみきれない。そこで長髄彦の妹婿、曉速日命に天孫族が恭順する形で、天孫族はヤマト入植を許されたのだ。
そもそも天孫族が、ヤマトに受け入れられたのには大きな理由があった。当時寒冷化で多くの難民がヤマトに押し寄せていた。
しかし古代日本には、道路も整備されておらず運搬する人も方法もなかった。それでも難民は多く、住居や食料、その他生活資材が不足していた。当時、この事情で鉄や鉄製品を現地調達できる部属として天孫族が必要だったのだ。
天孫族はこのようにして特別に入植を果たしたが、そのいきさつからヤマトでの地位は最下位の部族としてのスタートだった。
また、この東征ではヤマトの大豪族、葛城氏や丸邇氏との記事がない。それどころか、神武が即位した場所は葛城氏の勢力範囲である。ヤマトの豪族は遠慮して表だって賛成はしなかったが、天孫族の鉄に非常に関心をもっていた。
当時鉄は、軍事力を増大させるだけでなかった。鉄器の普及によって農業生産の効率が上がり、地域の開発や生活力も楽になる。
出雲によって鉄の供給を絞られていたヤマトにとって、天孫族は望まれていたのだ。そうはいっても、天孫族は武器を持つことは決して許されなかった。代わりにヤマトから授けられたのが、後に三種の神器となる草薙剱だった。
草薙剱は、その名のとおり草を刈る農機具である。つまり天孫族は、天神を鎮め、また祀る氏族としてヤマトに受け入れられたのだ。
天孫族は、この後も二種の神宝の一つとして大切に持たされることになる。
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