第2話 遺物は嘘をつかない
記・紀をいくら読み返しても、草薙剣は「草をなぎはらった」ことにしか使われていない。世界では当たり前の邪悪な神や敵将だけでなく、敵兵一人をも草薙剣は倒していないのだ。
こんな剣が、日本最高の権威ある剣である。世界的には、あり得ないだろう。それには、何か理由があるのではないだろうか。
当時のヤマトがおかれた状況が、大きく影響していた。最近の発掘の成果で、実は当時のヤマト地方が極端な鉄不足であったことがわかってきた。鉄器の保有量の差は「武力の差」であり、鉄の増大は国力の増大に直結する。
弥生時代後期では、鉄は基本的には九州北部が地理的利点で多く所有していたが、末期には山陰や吉備地方まで流通してきていたのだ。この時代の山陰の出雲には、大量の「鉄」が流入していたことがわかってきた。
しかし、ヤマトまでは鉄がまわってこなかった。それには、地理的な理由以外のある事情がおおいに関係していた。この事情によって、ヤマトは深刻な鉄欠乏症に悩まされていたのだ。この鉄不足の最弱のヤマトが、最弱の剣でどうして日本を統一したのだろうか。
最近の発掘で、日本最古の歴史書である記・紀は実は多くの真実が隠されていることが明らかになってきた。発掘して出てきた遺物は、嘘はつかない。今まで神話だけの話と思われきた過去の逸話が、意外と真実からきた話や物語だとわかってきた。しかし、歴史は勝者からみた歴史である。勝者側の都合で書かれた記・紀は勝者に都合の悪い話は書くことはなく、話を偽造、捏造するのは仕方のないことである。
しつこいようだが、遺物は嘘はつかない。遺物を調べることによって、真実がわかってくる。
日本において、日本の歴史を最も誠実に語るのは三種の神器であろう。三種の神器を調べれば、本当の日本の歴史がわかるようになっている。
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