第9話 信長拗ねちゃったよ

「信長、一年で立派になりましたね」

「母上、僕もやればできるとわかりました」

「楽しくやっているようですね」

「はい、母上の役に立てるよう頑張ります」

「ところで、このところあがり(税)が増えてますね」

「はい、税の抜けてるところがあり、それを今ひろい集めております」

「信長、それはもうよい」

「どういうことです。税が増えるのですよ」

「そうだが、それはせずともよい。

今のままでよいのだ」

「母上、合点がいません。母上は新しいことをしてお家を繁栄させました。

私はなぜしてはいけないのです」

「そうではない。そなたも新しい商売があっらしてもよい。

じゃが税を今までと違うところからとるのはダメなんじゃ」

「わかりません。

世の中は矛盾だらけです。

悪いことは正さなければなりません」

「しかしそれでは争いの元になる。新たないざこざは避けなければなりません。

正しいことはせずともよい」

「なぜです」

「正しいことをしても皆が納得し、従わなければなりません。

そなたはまだ若い。

それをするためには準備や配慮を経験してからじゃ。辛抱するのが仕事で一番重要なのじゃ」

「おもしろくない」

「仕事は忍耐です。母もそうじゃ」

「わかりました。じゃあ僕はもう何もしない」

 信長は、すねて出ていった。

 土田御前は、信長の性格を知っている。彼は賢く機転はきくが、人の意見を聞かず突っ走る性格だ。彼は大将の器でなく、裏方のほうが合っている。

 土田御前は、弟の信行を当主に信長を自分の後継者にしようとしていた。信秀の長男信広は、自分がお腹を痛めて産んだ子でなかった。

 しかし土田御前は、信広を織田家の後継者にはしたくはない。

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