第7話 母は、信長の自立を考える

 それほど三河は難しい。三河は、よそとは違い有力な守護大名がいない。尾張の斯波、美濃の土岐、駿河の今川と日本の国には多くは有力守護大名がいる。それらの国には支配者と支配される側の関係が存在する。

 しかし三河には、有力守護大名が存在せずそのような関係がない。支配させることになれていない三河の人間は、支配されることを極端に嫌った。三河では、支配者は出る杭なのだ。

 こたびの三河出兵も、出る杭の松平広忠を叩くことを目的とした弱者連合の依頼であった。彼らは共謀して松平広忠を打ち負かしたが、弱者通しの背比べをしている。  織田家もおとなしくしていなければならない。他国ものが、出る杭とみなされたら大変なことになる。

 それに比べて美濃は、権力者の斎藤道三とそれに反発する反斎藤道三派の対立である。土田御前もこのほうがつけ入る隙があり、動きやすい。

 すでに彼女は、平手政秀を使って美濃攻略に動き出していた。そして斎藤道三、反道三派双方にあたりをつけ接触して情報を集め、動向を探らせ監視していた。

 彼女は、いろいろ忙しい。そこで彼女は、尾張の税の徴収を息子の信長に任せようとした。

 彼は、大将の器ではないが頭が良く商才もありそうだった。そこで彼女は、信長を自分と同じ織田家の裏方の後継者にしようとしていた。

 しかし彼は、まだ若くいくじがない。いつも自分にくっついて離れない。賢いのだが、人の心がわからずいつも自分に聞いて彼は自身で判断しない。彼を自立されねばならない。

 ちょうど織田家は、拠点を古渡城から末森城に移すことになっている。信長を自分から離して那古屋に移して修行させることにした。

 しかし、それは大変な作業だった。信長が、どうしても同意しない。

 信長は、母から離れるのを極端に嫌がったのだ。

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