第4話 土田御前の依頼
商都の矢銭は、当時どんどん増えていた。名主はそれはいっときのことで来年はわからない。乱世の時代いつ戦乱に巻き込まれて商都が燃えたり、商売相手が滅んだり燃えたりして手形が紙くずになったりする。
それよりは土地のほうが手堅いのが当時の
常識だった。それを逆手にとって、信秀は人気のない商都を率先して拝領していつしか尾張の大きな商都のほとんどの権利を手中に治めた。
すでに尾張の代表的な商都の津島や那古屋を押さえた信秀には、多く矢銭が入ってきた。金銭的に信秀の他に尾張にかなうものはなく、表面的には皆信秀に従わざるをえなかった。
その彼に今、三河のものから大口の足軽の派遣の依頼がきていた。いつもと違う他国からの依頼に信秀は少し困惑していた。「わかりもうした。
しかしあなた様は他国の方ですので少し多い報酬をお願いしたい」
「分かっております。では三河安祥でどうでしょう」
「わかり申した。それでよろしゅうございます。準備が整い次第三河に出兵いたします」
「ありがとうございます。我々の都合もありますので出兵の日時は早めに連絡してください。五千ほどの足軽をお願いします」「ご安心くだされ。必ずやご要望にかなう働きをいたします」
「頼もしいお言葉、では三河でお待ちしております」
信秀は、このとほうもない申し出に内心はとまどいながら快諾した。というのはこの交渉を受けるよう土田御前にきつくいわれて、信秀は承諾しか選択肢はなかったのだ。
それにしても、信秀は不安だった。三河は他国である。彼にとっては、かってがわからない外国である。そんなところになぜ、命をかけていくのか理由もわからない。
信秀は、三河との交渉後すぐに不満になって土田御前に会いにいった。土田御前は落ち着いて信秀を待っていた。
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