第3話 父、信秀の努力

 父は父の実力を恐れた反対勢力に殺され、彼は父を殺した張本人に長年にわたって支えなければならなかった。それでも彼はこの屈辱に耐えて勢力を蓄えてついにはその張本人を打ち負かした。

長慶は苦労人で部下は門地や出身だけでなく、有能なものを採用した。また、一族を大事にして多い敵に連携して対応した。       しかしそんな苦労人の長慶も、世間では評価されず低い身分とみなされていた。

 織田信秀は、その三好家よりも身分は低い。三好家が足利将軍の菅領の披官であるのに対し、彼は尾張守護斯波氏の守護代の織田大和守の奉行にすぎない。

 そこには、中央のキャリアと地方の中間職程度の大きな差が存在していた。

 同じ足軽請負業者でも、信秀と長慶では像とアリほどの身分や権力の差があった。それでも足軽を雇うことが本業であることには変わりがなかった。彼らは、その仕事をどのように生かすかで人生が決まるのだ。長慶は天下人となったが信秀も基本的には足軽請負業で儲けることだった。しかしそれは案外難しい。合戦で足軽を失えば大きな損失だし、負ければ報酬はない。しかも依頼主の多くは弱い側だった。

 信秀は、依頼主にはどうしても勝ってもらわなくてはならない。しかも、足軽の損失をできるだけ少なくしなければならない。

 かなり難しい問題に、彼は敵や味方だけでなく関係者まで多くの情報を集めて分析して、より有利な条件での決着や和議になるよう取り計らった。

 彼は、このように上手く働いて報酬を得た。彼はその報酬を土地でなく、商権をいただくことを基本とした。

 一生(一所)懸命という言葉があるとおり、土地は武士の命の次に大事なものである。信秀は、それよりは商都の権利のほうが手っ取り早く金が手に入りお得だと考えた。

 

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