第2話 足軽請負業者の出世

そして実際一攫千金を狙ったゴロツキが多く、野心を持ったものも多くいた。

 足軽請負業は、応仁の乱から始まった。有名な人物は、足軽大将の骨皮道賢である。彼は伏見稲荷社を拠点にして三百人の足軽を動かして敵の糧道を断つため、略奪や妨害を繰り返して敵を苦しめた。

 しかし最期は味方に見捨てられ、寂しい死に様だった。世間も彼らを一人前の身分のものとみなさず、乞食同然の評価しかみなさなかった。領主も合戦の時以外は、彼らとの接触を嫌って城下の出入りを禁じていた。そんな彼らであったが、プライドをもって真面目に仕事をこなしていた。

 足軽請負者とはいえ、依頼人になめられては仕事にならないのだ。彼らの依頼人は、彼らへの報酬は出きるだけ払いたくない。難癖つけて、報酬をけちろうとした。身分が低い足軽請負業者には、わずかな金で充分だというのだ。

 逆に足軽請負業者は、なんとしても全額払ってもらおうと考えた。依頼人の大名や名主は、武士である。武力を背景に、足軽請負業者を追い払おうとする。そのため足軽請負業者は、命知らずの武頼漢を大勢集めて館に押しかけた。

 武士は合戦での戦死はともかく、命知らずの武頼漢に殺されたら不名誉しか残らない。例え主人が戦えと命じても、武士にとって命は一つで家族の生活もかかっている。しかも、金を払わない主人のほうが分が悪いことは世間も知っている。

 戦意に乏しい彼ら武士の主人に対する冷ややかな反応に、依頼人はあきらめて全額報酬を払ってしまう。

 いつの間にか足軽請負業者は、武士よりも実力をもつものすら現れた。これこそ、究極の下剋上である。武士よりも実力をもった足軽請負業者のなかでも、いくさの主力で活躍して勝敗のカギを握るものすら現れた。

 そしてついに、そのなかから天下人となる傑人が登場する。

 阿波三好郷の出身である三好長慶だ。彼は菅領細川氏の足軽請負人として活躍して細川氏の披官となり、今では主家の細川氏をしのぎ足利将軍家さえ動かせるまでになった。

 ついには近畿を中心に十ヵ国を支配して天下人となった。彼がそうなるには相当の苦労があった。

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