マザコン信長太平記
@michiseason
第1話 父親の職業
「足軽をできるだけ出してくれ」
足軽請負業の織田信秀のもとには、たびたびこのような依頼がまいこんでくる。そのたびに信秀はまず必ずいう。
「お声をかけていただきこうえいしごくでございまする。じっこんにさせていただいているお殿様のためならばに私めは出来るかぎりのことをさせていただきまする」
信秀はこのようにして相手の信頼を勝ち取り、尽力して期待にこたえ多くの報酬を得てきた。そして幾度も功績や実績を積んだ信秀は、徐々に実力を認められ発言力をもち勢力も広がり、ついに尾張一の実力者となった。
当時は、戦国時代である。天皇はもちろんのこと、足利将軍さえ権力を失い大名の相続争いや領地の取り合いを仲裁、停止するものがいなくなった。争いは日本各地でおこり、合戦はひんぱんに行われ、下剋上も普通の出来事になった。大名や名主も平穏でなくなり、おちおち寝ることもできない。それでも多くの兵を常備備える経費もない。そこでいざ合戦の時は、足軽を雇うことになった。
足軽請負業は、戦国時代になって始めてできた職業だ。彼らは多くの大名、名主らの依頼でおおいに繁栄した。
しかしこの職業は難しく、相当な信頼や知識、また味方の情報だけでなく敵の情報も正確につかむ情報人材ネットワークも必要だった。
当時、足軽を雇うことは簡単だった。金さえあれば、いくらでも足軽が集まった。しかし、その質に問題があった。ただ金目当ての無頼漢が多く、戦意に乏しかった。しかも行軍中に強盗、乱暴事件をおこし、それ目当てのものさえいて、戦力にならない足軽請負業者には次はなかった。
また、合戦となっても安心はできない。多くの足軽を失うと損失は大きく、もし負ければ報酬はたいていゼロだった。足軽請負業は儲ければ大きいが、大きなリスクもあり、危険なバクチでさらにキツイ職業だった。
普通のまともな人間にとって足軽請負業は、その日暮しのはぐれもの集団ぐらいとみなしていた。
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