アルケニー・プロファイル【カクヨム版】

釣ール

工場にてエモノを待つ

 沖縄という場所には空を飛ぶ天敵である鳥すらもメシにするクモがいるらしい。


 いくら風でどこにでも飛べるとはいえ、なんでこんな工業地帯に着いてしまったのだろう。


 どうしようもない田舎で日本人は少なく、自分達が産まれた場所だったかもしれない国の人間が死んだ顔で過ごしている。


 そうだよなあ。

 天敵に味方するつもりは一切ないが


「なぜこんなところでこんなことを?」


 という気持ちだけは共感してしまう。

 田舎で娯楽も少なく、やることは食べて仕事して子孫を残すかどうか考えるだけ。

 ふっ。嫌にならない方がおかしいだろう。


 それに他の生き物が幸せそうに見えるなんてよくあること。

 じっさいは網を張る狩りでの生活か人間の家でつぶされないように考えながら壁や床を歩き回り背中に子供を乗せて歩くか、地面に穴を掘るかそれだけ。


 いずれも自分達クモとは違う『アミ』を持つ人間に食われないように祈るだけ。


 シドニーで産まれれば毒と牙で人間の肌と骨を溶かして一矢報いてやるものを。

 ま、面倒だ。

 関わらず死ねればどれだけ幸運だろう。


 それは工場でもれている人間達の話を聞いて思い知らされる。


 お前達も天敵がいたら同情くらいはしてやりたい。

 基本は同族とのしがらみで腐っていくんだ。


 笑えねえ。

 おっと。

 やっと小さな虫が引っかかった。

 これであと三週間は過ごせる。


 一体、誰が俺たちを創ったんだろうな。

 人間達よ。

 そいつ見つけたら一人でぶん殴ってくれ。

 もし糸の先でその光景を見つけたらエモノがいなくても遠慮なく巣を張るからさ。


 ストレス?

 それがたまってるのはお前達だけじゃないことを油とともに染みるその手に刻ませてやりたい生き物は沢山いるんだからな。


 小さくバカヤロウとつぶやいても聞かれないし聞こえない。


 そして分かりあえない。

 それだけ。

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