第23話 無言を貫く
能力者にもランクがある。
殺し合いに使えるものや日常生活に役立つものは、ランク5。つまり最高ランクである。これらの能力の保持者は、優先して怪異科に保護してもらえる。
反対に、あまり使えない能力。例えばリフティングが巧くなる能力を持っている奴がいたのだが、そいつは殺処分となった。
厳しいと感じただろうか。でも、それが現実だから仕方がない。
子供には甘いくせに、弱者には厳しいウチのお偉いさんが作ったルールに違和感が無いと言えば嘘になる。
しかし、組織なんて何処も謎のルールがあるものだと思い出す。特に学校なんかが最たる例だ。学生の本分は勉強なのだから化粧なんかするなと言うくせに、社会人になったら「化粧はマナー」とか言いやがる。
このことに理不尽さを感じているのは教師も同じだろう。しかし、彼らは「ルールだから」と生徒達から化粧道具を没収する。それが仕事だから。
俺も同じだ。
お偉いさんに逆らったら、俺が殺されるかもしれないのだから、意味の分からないルールに従うしかないのだ。
「‥‥‥分かった。私、殺されるんでしょう?」
真っ白なな廊下を目隠しして歩かされている手嶋夏美は、笑みの震える声でそう言った。何がそんなに可笑しいのかは聞かない。こんな馬鹿げた事態に笑うしかない気持ちは分かるから。
連行する女性3人は慣れているのか、眉一つ動かさない。
3人とも同じような短い髪型をしている上に青い帽子をかぶっているものだから見分けがつかない。個性という、仕事の邪魔にしかならないものを徹底的に排除した優秀な執行人達だ。
俺まで見習って無言を貫く。
「ねぇ、そうなんでしょ?死刑なんでしょ?どういう殺し方なの?絞首刑?もしかしたら、アンタが直接殺してくれるパターン?」
無言を貫く。
「そうだ。そうだよ。アンタが殺してよ。全くの他人よりアンタがマシだ。」
無言を貫く。
「‥‥‥ねぇ。なんで黙ってんの?そこにいるのアンタだよね。っていうか名前なんていうの?これから殺される相手の名前くらい知っておきたい」
無言を貫く。
「おい!なんで黙ってんだよ!こっちは複数の人間がいることは気配と足音でわかってんだよ!3人、いや4人か?いるんだろ!?無視すんなよ!」
無言を貫く。
「‥‥‥ごめんなさい。反省してます。いじめの連鎖に心が耐えられなかったんです。でも、人を、きらりを使って復讐しようなんて最低でした。だから、何か喋って下さい」
無言を貫く。
「‥‥‥グスッ。ゥェ、うぅェ」
無言を貫く。
「‥‥‥え?今階段上がってる?何の台に上がってんの?せめてどういう器具なのか見せて!お願いです!見せて下さい!」
無言を貫く。
「いや!やめて!!!何!?なんで私、床に押さえつけられてるの!!?」
無言を貫く。
「まさか、この現代日本でギロチン!?冗談やめてよ!もっとなんかあるでしょう!?できるだけ苦しまないで済むやつが!!!」
無言を貫く。
「いや!せめてタイミングを教えて!!!頼むよ!私が全部悪かっ」
手嶋夏美の首が切断された。
コロンと転がる頭を持ち上げて、手のひらで目を閉じさせた。
‥‥‥はぁ。
「疲れた」
やっと声を出せた。
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