第8話 女子校潜入捜査
「女子校に潜入します」
「嫌です」
虹山さんの言うことに逆らうことが無いはずの俺は、即答した。
「大丈夫。加賀くんは細身だし、顔も中世的だから女装すればなんとかなるって」
「そういう話じゃないんです。虹山さんみたいな大人の女性なら平気なんですけど、女子高生を前にすると吐き気が‥‥‥」
「思春期に何があったの‥‥‥」
だってアイツら、俺をゴミを見るような目で見るし、ずっと声デカいから怖いんだよ。
「良いじゃないか女子校潜入。僕が代わりたいくらいだ」
「菅野さんが女装なんかしたら、逮捕しなくてはならなくなりますよ」
「罪に問われるレベルなのかい!?」
課長が参入してきて、矛先が少し逸れた。その調子です課長。
「話を戻すけど、加賀くん。私も一緒に行くから大丈夫だよ」
クソ。さすがに無理か。
‥‥‥しかし、虹山さんが女子高に潜入か。
「ちなみに、虹山さんはどういう設定でいくつもりなんです?」
「ふっふ。王道の女子高生さ!」
「‥‥‥」
俺は両手で顔を覆った。
「な、何だよ。まだ23歳だからセーフだって!これでも私、現役の時はモテたんだぞ!バレンタインに男子からチョコもらうレベルだ!もちろん女子からももらったぞ!告白も7回されたことある。そのせいでカースト上位の女子に嫌がらせされるっていう少女漫画の主人公みたいなことも経験したし!」
顔を赤くして己のモテ自慢をする虹山さん。
いや、違うんです。
年甲斐もなくJKコスプレをするをする社会人に引いたわけではないんです。
貴女の制服姿を想像して照れただけなんです。
スーツ姿しか見たことがないから、スカートを履いてくれるというだけで歓喜する。その上、今回潜入する霧蔵女子高等学校は制服は、セーラー服だ。
俺が通っていた学校はブレザーだったのである種の憧れがある。『明日ちゃんのセーラー服』という、作者さんの好みを全開にしたタイトルの漫画を読んでからは、ますます好きになっていた。
「ん?なんか、いきなり折れたね」
不思議そうにそう言う虹山さん。その隣に座る課長は俺を見てニヤニヤ笑っていた。
こっち見んなジジィ!
と叫ぶのを堪えて、その視線を受け止めた。
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「体調不良で休まれている後藤先生に代わり、皆さんに数学を教えることになった有田優子です。よろしくお願いします」
10年ぶりに教室に足を踏み入れたおかげで吐き気が酷いことになっていたが、ハキハキと挨拶することができた。
ちなみに、教師役なら女装する必要はないのではないかと気づいたのは、当日の朝だった。
虹山さんがあまりにも褒めてくれるので、馬鹿な俺もノリノリになってしまい、そんな単純なことにも気づけなかった。
今更設定を変えるわけにもいかないので、茶髪スーツのデキる女教師の姿で望むことになった。
「美人だ!」
「女子高に美人がきた!」
「おっぱいは無いけど美人だ!」
これから多くの時間を共有するだろう生徒達は、女装したおっさんに興味津々だ。
「彼氏はいるんですか!?」
「初体験はいつですか!?」
「生徒に告白されたことはありますか!?」
まあ、嫌われるよりはいじられるよりは、こうして弄られる方が良い。
「イヤイヤ。皆さんの方が恋愛に詳しいと思いますよ」
「またまたー」
「ウチら、出会いが無さには定評あるから」
「マジそれな。分かりみがすごい」
そう反応してくれる生徒達とは打って変わって窓をじっと見ている生徒がいた。
金髪・ネイル・日焼けと、古からの王道ギャルの見た目の彼女の名は板垣きらり。
今回の潜入捜査の対象者だった。
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