第5話 高度は8
高度は8
『バッテリー一時停止』
「PCS完全復帰」
『PCSは完全な状態ではありません、自己修復範囲外です、起動しない可能性があります、それでも実行しますか』
「承知済み」
『起動開始』
『起動に成功しました、予測実行値は十七パーセントです』
先ほどの計算よりも減っているが、何とか動いてくれるだろう。
『機体装甲面に異常を確認、高度を下げてください』
丁寧に二度目の警告を告げる。
「装甲情報を第三種に指定、限界値を計測」
『現在の気圧を測定します』
グリフォンは二人のハイフライヤー目掛けて急上昇している。
『現在の気圧配置を確認、情報取得、第三種飛行可能高度は一万メートル、飛行可能時間は一時間です』
「また来るぞ!」
「今考え中!」
武器は効かず、こちらの内部はボロボロ、残った武器はあと二種類。
鉄斗が一瞬笑う。
そう、こちらの武器は、ね。
「最初と同じ、真後ろにつけて!」
「それじゃまたあれが、手はあるのか!」
「銀ちゃんの腕次第、だよ!」
「リョーカイ!」
縦旋回をし、グリフォンの裏を取る。
二機同時に天を駆ける。
「シルフ、起動準備」
残された手は少ない。
『音声情報を確認、シルフ、待機します』
「右レバー、青いボタン、ロックするのはあの機銃、いいね」
「何とか」
アザトースがこちらへ向けられてくる。
高度は9
グリフォンが水平に背面飛行をする。それに追随するように二人のハイフライヤーがグリフォンの下に滑り込む。
状況は最悪ながら極めて良好だ。
「シルフ、オン」
『シルフ、起動します』
「アザトースが発射される瞬間だ、その前でもその後でも撃墜される!」
「いい状況だ!」
限界までハイフライヤーがアザトースの発射口に接近する。
銀花の挑発だ。
これに乗ってくれれば成功、それ以外なら、失敗だ。
先が、光る。グリフォンがアザトースの発射準備を整えたのだ。
「今だ!」
銀花が思い切りボタンを押す。
ハイフライヤー下部に設置された機銃、いや、大き目の筒が発射した。
筒は二段階構成で炸裂、一定方向に圧縮された空砲を放つ。
元々は相手の機体をぐらつかせるために用意したもの、だが今は、
「いった!」
アザトースが発射されると同時に空砲は機銃を直撃、霧化されているアザトースがグリフォン後部に降りかかる。
それを確認するかのようにグリフォンが揺れ、急激に失速していく。
アザトースの影響を受けたのだ。
「やった」
うねりを上げながらハイフライヤーは上昇し、反対にグリフォンは失速する。
恐らくは前面の非常時用機関が作動して数秒後には持ち直すだろうが、二人がいなくなるには十分すぎる時間だ。
「実験段階、ね、なるほどワクチンはまだないわけだ」
鉄斗が呟く。
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