泡沫④

「私とお友達になっていただけないかしら?」


 自分と同じぐらいの年齢の少女が、エルザにそう話しかけた。少女は歳不相応な煌びやかなピンク色をしたドレスに身を包み、そして、背の高い執事のような格好をした、一人の男性を連れていた。


 まるで人形のように整った顔立ちに美しいブロンドの髪の毛。それと、日に当たってないのでは無いかと疑いたくなるほどの白い肌を持つ彼女を見ていると、まるで、絵本か何かから飛び出てきたように思われた。


「あたし?」


 エルザが訊ねると、少女は恥ずかしそうに頷く。


「私には……実は友人と呼べる方がいないの。だから……」


「いいよ!」


 少女の言葉を遮るようにそう言うと、両手で彼女の小さな手を取り、無邪気に笑って見せる。


「い、いいの? 本当に……?」


 少女は嬉しそうに顔を輝かせると、後ろに立つ執事に顔を向ける。


「良かったですね、お嬢様」


 整った顔を綻ばせながら、執事の彼が言うと、少女は元気よく頷いた。


「あたしエルザ! あなたは?」


 エルザの問いかけに、少女は恥ずかしそうにはにかんだ後、ゆっくりと口を開く。


「私の名はシレーナ。シレーナ・プリンチペッサと申します。それと、後ろの彼は私の執事をしてくれています……」


「ルカと申します。シレーナ様共々、よろしくお願いいたします」


それからシレーナは、よろしくねとエルザに微笑みかけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る