20XX年 地球爆発
EJ えしき
第1話 宇宙の誕生…そしてなぜ
人間が計り知ることのできない遥か悠久の時の彼方。
そこには…例えるならば重く光ひとつも存在しない霧のように混沌(カオス)とした「ゾーハル」と呼ばれるものが存在していた。
ある時その一部が急激に拡張する現象が起きて一つの闇の空間「ダークマター」が誕生した。しばらくして、その闇の空間にはのちの惑星になる「星の卵」が泡のように次々と現れ始めた。ダークマターには自然発生した不可視のエネルギーが多く存在していた。その中にはいわゆる核融合的な現象が発生して、我々が知る太陽のような「光」を放つ星も誕生することとなる。
さらに最初の生物であるアーキアと呼ばれる古細菌が発生して、ダークマターに存在するバリオン物質(物質の元となる重粒子)や放射線を栄養源としていた。ダークマターにはアーキアのほか、バクテリア(細菌)、ユーカリオタ(真核生物)がいて、この三種が全生物界を三分している。アーキアには”高度好塩菌”、”メタン菌”、”好熱菌”があり、それらが隕石に付着して惑星の地上に落ちて、生物の誕生起源になる場合もある。人間の人知を超える現象が次から次へと発生したのである。
まるで泡のように大量に発生していった星はお互いの持ち合わせたエネルギー作用で星群を構成し始め、それがいわゆる銀河と呼ばれるものへと発展していった。ひとつの宇宙であるダークマターの中には、こうしていくつもの銀河が誕生することになっていったのである。
さて、人間をさらに困惑の大海原に投げ入れるようなことを付け加えなければならないのだが…初めに話したゾーハル。宇宙の構成を分かりやすくするために「一つのダークマター」についての構成を説明したが、正確にいえばそのダークマターは「一つのゾーハルの中に複数存在」している。つまり人間が勝手に「宇宙は一つ」と思っているのは間違いで、「一つのゾーハル」の中にいくつもの宇宙がぶどうの実のようにいくつも寄り添って存在している。いわゆる多次元宇宙と呼ばれるものだが、それでは終わらない、あえてそれを「小ゾーハル」と呼ぼう。
その「小ゾーハル」がさらに複数存在して「中ゾーハル」を構成しており、一つの中ゾーハルのグループを「1ゲン」という単位で呼んでいる。現在「大ゾーハル」中に7ゲン存在しているという。もはや人間の能力では測定も解析も不可能な無限世界なのだ。
さて、それはさておき…なぜ普段の生活に追われる夫婦がこんなことを真剣に話すようになっていったのか、そのいきさつを説明しよう。
ある日、突然妻の夢の中に現れた奇妙な杖をつく老人。長く白いひげ、反り上がるこれまた長く白い眉…にこにこと満面の笑みを浮かべていたという。日を追うごとに夫婦二人が一緒に居る時間や休日を狙い(言い方が悪いが)、昼夜お構いなしに勝手に妻の口を使い、妻は勿論のこと夫婦二人が理解出来るように話をするようになった。
最初は妻が急性の多重人格になってしまったのか、一度病院に連れていくべきかとあせりを覚えたが、冷静に考えると見た目はいつもと何ら変わったところはないし、夢の内容も聞いていたし…
話してくる内容がとても知っている妻との日常会話ではなく、知識においても有り得ないことや興味深い話ばかりであった。気づいた頃にはすでに夫婦仲良くその老人の話にどっぷりと引きずり込まれていたのである。
さて…これからが老人の話してくれた人間には永遠に知られざる真実と、老人と関わることになってしまったお陰で得た新しい仲間たちとの出会いと別れ、そして地球の終焉までの話の始まりである。
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