第40話 ユリウスの実
え、カダナヒスの実じゃない……?
「え?! これ違うの?」
『どう見たって違うだろ!』
ふざけてんのか? 、とグラッドは僕に向かって怒鳴ってきた。
どう見たって、て言ったって色も形も一緒じゃないか。
「あ、本当だ。これ、カダナヒスの実じゃないですよ」
「え、嘘ぉ~~!」
それは、食べる前に言って欲しかったよ、ライ。
それにしてもヤバいなぁ。ライまでの2人に、いや更に分身して4人に見えてきた……。
暖炉の炎のせいか、視界が赤っぽい……。なんかフワフワした感じだ。
『ヤバい! レイトの目が充血し始めた。早く吐かせないと!』
「あ、自分、嘔吐薬持ってます! 使って下さい!」
え、僕。今から吐くの……?
『さぁ、レイト。これで、胃の中、空にしような』
仕方ない、と良いながらも何故かグラッドがノリノリに見えるのは僕だけだろうか……。
グラッドは、その調子で僕の口を開かせると、ライから預かった嘔吐薬を突っ込んだ。
「……?」
飲んでも、何も起こらな、い……?
う゛、─────。
「────!!」
約15分後……。
「う、ぅぅ~。まだ気持ち悪いよぉ~」
『いやぁ~。いい吐きッぷりだったよ』
「ですねぇ~」
2人とも何で、そんなに軽いの?
酷くない?
「ねぇ、結局あの実。カダナヒスの実じゃないなら何の実なのさ」
『はぁ、あれはユリウスの実だよ』
知らなかったんだね、と呆れぎみにグラッドは教えてくれた。
どうやら、僕が食べたのはユリウスの実という遅延せいの猛毒の実だったらしい。
食べると、目が充血して視界がボヤけ赤みがかって、少しずつ思考が回らなくなるとか。
この話は、冒険者の中では有名な話らしく、常識だそうだ。
「レイトさんは調査団に所属していたと聞いたので、知ってると思ったんですけど……」
すいません、とライは僕に頭を下げてきた。
「いや、いいんだよ。僕の不注意のせいだし。というか、グラッド。冒険者やってたの? 冒険者ギルドの行き方も知ってたし」
『ま、まぁね。気にしなくて良いよ』
なんかグラッド、オドオドしてないか? なんか聞かれたくなさそうだし、別にいいんだけど。
「変なの」
「もう時間ですし、明日に備えて寝ましょうか」
「そうだね」
『うん』
僕たちは、ライの声掛けに答え、僕たちは厚めの掛け布をかけて目蓋を閉じた。
空には、ひとつの大きな一番星が輝いていた。
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