第38話 片目の魔法石



 辺りが宵闇に包まれ、空は星が瞬き始めた。

 黄色の魔法石を片手に、レイトとライの焚き火に向かって歩いてきたグラッド。


 「あ、グラッドが来た。おーい、グラッドー。こっちこっちー」

『やっぱりカダナヒスを食べてたのか。まったく、ここにバジリスクストーンが現れなかっただけ良かったよ』


 黄色の魔法石を鞄に収めながらドカッと座り込む。


 「なぁグラッド。川の近くに誰も住んでいない古屋があった。今日のところはそこで朝まで過ごそう」

「ねぇライ。寝込みを襲われるって事は無い?」

「さぁね、それは運次第。山脈地帯の何処にいても襲われる可能性は否定出来ないな」

『山脈地帯を過ぎるまでは安心出来ないかもしれないよレイト』


ーーーーーー

 古屋に入った3人。


 レイトはいつバジリスクストーンに襲われるのかと気が気じゃなく、なかなか寝付けなかった。


 水の流れる音に混ざって、ガサガサと枯葉の擦れる音。


 『レイト、バジリスクストーン退治に行くよ』グラッドは小声で言うと、レイトを揺り起こした。

ライは既にドアの横で待っていた。


 「私の剣を貸すよレイト。ヤツの目が光る前に首根っこを斬れ」

「ぼ、僕が剣を?使ったことな……。あ、軽い」

「君でも振りかざせる。もし光を発したら、石化無効の魔法石で守ってあげる。しっかりねレイト、グラッド」

『さ、出るよみんな』


 木々の間を這うように進むバジリスクストーンは、月明かりに照らされると、片目だけが反射して見える。


 3人は息を殺し、気が付かれない様に間合いを詰めていく。


 『今だレイト!』

グラッドは黄色の魔法石をバジリスクストーンに向けると、姿が照らされた。


 「う、うおおおおおっ!」

レイトが駆け寄って、剣を振りかざすと同時に、バジリスクストーンの片目が仄かに光り始めた。


 「怯むなレイト、斬りこめっ!スキレーノッ」


 3人は石化無効の霧に包まれ、レイトは必死に斬りこんだ。

バジリスクストーンの首が斬られ、動かなくなる。やがて砂に変わっていった。

 頭の部分には片目の魔法石だけが残されていた。


 グラッドはその片目の魔法石を拾うと、ライに手渡した。


 『ギルドの報酬は増額するでしょ』

「多少増える程度、でもバジリスクストーンの魔法石は錬成し直せば再利用出来るが…」

 ライは腰の革袋に魔法石を入れながら言った。


「ありがとうライ。剣は返しておくよ。」

肩で息をしながらレイトは剣を返した。


 (ライは信じてよさそうな気がしてきた。僕と同じアランド王国出身だったなんて……。)


 「ライ、この先どうするの?」

「そうだな、埋もれたギルドでこの魔法石を報酬として換金する。……が、それは後でも出来る。私もアランドまで付き合うよ。これは依頼とは関係無い、私の意思だよ」

『そうか、それなら心強い。またバジリスクストーンに襲われないとも限らない。』

「ありがとうライ」


 空は既に薄っすらと明るくなり始めていた。

 ライは2人に同行してアランド王国に向かうことになった。


 「山頂は空気が薄い。少し急いだほうがいいだろう。山下りになれば少しは身体も楽になる」


 グラッドは相変わらず身軽で、先を歩いていく。


 「グラッド待ってよー」

 後から2人が付いていった。

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